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建設論評・投資は成長の原動力
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>先月末、日本の景気は既に後退期に入っているとの判断が示された(内閣府経済社会総合研究所)。景気動向指数をもとに判定すると、2012年11月から始まった景気拡大は18年10月に山を迎え、以後は下降を続けているというのである。拡大期は71カ月間で、戦後最長の拡大期(02年1月-08年2月)には及ばなかった。
景気拡大とは言っても、経済成長率は1%に満たないのだから実感に乏しい。しかし、景況感は心理的な作用もあるから、拡大か後退かの違いは社会経済活動の質に大きな影響を与える。同時に、経済政策の柱であった「成長戦略」(13年6月)の実効性が否定されたといって良い。
「成長戦略」は、デフレマインドを一掃するための大胆な金融政策という第1の矢、湿った経済を発火させるための機動的な財政政策という第2の矢に次ぐ、第3の矢で、「期待」を「行動」に変える戦略であった。産業の新陳代謝の促進、雇用制度改革・人材力の強化、IT社会の実現等の産業再興プラン、「健康寿命」の延伸、クリーン・経済的なエネルギー需給の実現、次世代インフラの構築等の戦略市場創造プランなどを展開し、10年間の平均で名目GDP(国内総生産)成長率3%程度、実質GDP成長率2%程度の成長を実現することを目指すとしていた。
成長の原動力が投資であることは間違いない。景気の拡大は投資とともに進む。しかしながら、企業の投資行動はケインズがたとえたようにflighty bird(気まぐれ鳥)で、その行動を予測するのは難しい。政府の経済政策は、起業家の信頼を得ることはできなかったのである。
いまコンサルタントなどが喧(けん)伝(でん)しているのは、ICT投資や低炭素化投資である。あるいは、知的財産投資、人的資本投資などに重点を置くべきとの学者の提言も目立つ。しかし、これらの推奨も起業マインドをつかむに至らないのではないか。人を駆り立てる魅力に欠けるからである。
投資は「賭け」なのだから、合理性だけでは動かない。感性や意思の豊かさ、さらには芸術的なセンスが投資行動を駆り立てるのである。アラン・ケイの「未来を予測する最善の方法は、それを発明することである」という言葉は、起業マインドを端的に示している。
成長を再起動するには2つのことが必要である。1つは、起業マインドが育つ土壌を耕すこと。革新的な投資を決断するのは、思考の枠組みを疑い、自己決定するパーソナリティーである。そしてそのようなパーソナリティーは、人的資本投資によっては育たない。才能の自由な発現を妨げないことが必要条件である。
もう1つは、投資のフィールドを広げること。便利さ、安全・安心、効率性などは魅力あるフィールドではない。候補の1つは建造物である。過去、伽藍(がらん)、都市、モニュメントなどの建設が人の心を駆り立て、社会・経済・文化の成長をけん引した。リアルな空間のなせる技だったが、それはまだ開拓の余地があると考える。
建設業は、投資を現実のものにする仕事である。未来を発明する感性や意志を持ち続けてほしい。 (羅)
残り50%掲載日: 2020年8月7日 | presented by 建設通信新聞