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  • 建設論評・定着するか在宅勤務

     在宅勤務が人口に膾炙(かいしゃ)される昨今だが、数カ月前には想像もつかない言葉だった。勤務の場所とは、職場が当たり前のことだったから。

     

     在宅勤務で思い浮かべるイメージの一例は、自宅に持ち帰って、片付ける仕事であろう。事情があって職場に居残りができないが、翌朝までに仕上げておかないといけない。仕方がないので、自宅に持ち帰って片付けることにする。

     

     2つ目の例は、在宅の人に外注するイメージであろう。ゼネコンやコンサルタントの設計や積算や営業の職場では、パソコン、ワープロ、CADがなかった時代、和文タイプで清書した書類を作る、トレースして製図するなどの外注を慣用する時代があった。

     

     こうした商慣行の経験を踏まえた上で、定常的な在宅勤務に適合する機能的な制度設計を考えてみる。まず、すべての部署の業務を洗いざらい分析して、在宅勤務の要否・可否を分類する必要がある。

     

     決まりきったことを繰り返す定常的、個人技が決め手となる専門的、企画や調査などの管理的な業務などは在宅勤務への移行が容易と見なされる。その一方、接客が要の営業職や監視・監督・指導の比率が高い建設現場などは、移行が困難とされている。

     

     こうした行動労働学の研究は、建設分野には及んでいなかったから個々の企業で異なる職場環境の実態を当事者が調査して、判断しなければならない。その上で、職場勤務重視と在宅勤務重視の部署とにシフト分けする。永続的な在宅勤務が制度的に定着すると、通勤・厚生福利などが不要になる一方で、在宅勤務手当が必要になり、社内の勤務空間の縮小が進む半面、情報インフラの整備が必要になる。

     

     この一大改革に際して組織のトップが下す決断は、小組織では直接的で速断されて効果がすぐに表れるが、大組織では効果が表れるには時間がかかることが悩ましい。しかも、このような改革は社内だけでなく、社外の発注者、下請業者、納入業者、同業他社などにも対応を求める必要がある。大企業・大組織になるほど混乱が避けられないだろう。

     

     在宅勤務に対して従業員は「通勤負担からの脱却」「テレワークの利便性」などを挙げて、おおむね好評のようであるが、「オンライン会議は相手の表情や場の空気が読めない」「ハンコの押印を廃止できない」「超過勤務の時間管理が困難」「関係者が対面する機会は絶対に必要」との意見があって、評価は一枚岩ではない。

     

     ある国際的な研究機関によると、オンライン化が容易で在宅勤務が適する職種の比率は、米国が36%、英国が37%、日本は17%。在宅勤務が難しい職種の比率は、米国が18%、英国が17%、日本が27%との調査があるそうだ。英米に比べると日本の職場は在宅勤務に適した職種が少なく、難しい職種が多いとの指摘である。この指摘に倣えば、日本の職場は一時的に在宅勤務に避難しても、喉元過ぎれば旧来の職場勤務に戻らざるを得ないということだ。

     

     在宅勤務を定着させるかぎは、わが国特有のビジネス文化の克服にあるようだ。 (康)

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    掲載日: 2020年8月19日 | presented by 建設通信新聞

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