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  • 菅新政権 国土強靱化、公共投資の行方は/防災・減災 言及なし/規制緩和 前面に押出す/過度な行革 地方に弊害

     「安倍政権が進めてきた取り組みをしっかり継承して、そして前に進めていく」。16日の就任会見で語ったその言葉どおり、新型コロナウイルス感染症への対処や経済成長の実現、戦後外交の総決算など、安倍政権下の重要政策を軒並み受け継ぐ菅義偉新首相だが、防災や減災、国土強靱化について触れることはなかった。他方、行政を対象とした規制改革を前面に押し出し、安倍政権というよりむしろ、小泉政権をほうふつとさせる面もあった。菅新政権下で国土強靱化や公共投資の行方はどうなるのか。

     

     16日に閣議決定された政権運営の「基本方針」には、12年の第2次安倍内閣発足以降明記され続けてきた『復興』と、防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策がまとまった18年の第4次安倍改造以降盛り込まれてきた『国土強靱化』のいずれの記載もなかった。

     

     『復興』については21年で東日本大震災から10年を迎え、復興・創生期間が終了することから1つの節目として記載しなかったともとれる。一方で、国土強靱化については、基本方針の前文に「激甚化する自然災害」と課題認識があり、会見の中では被災者へのお見舞いの言葉もあったが、安倍政権で強力に推進してきたその対策に対する言及は一切なかった。

     

     菅首相が強く訴える規制改革についても、公共投資の視点からは注意深くみる必要がある。景気浮揚策を考えると、公共投資に代表される財政出動と、規制改革の一環である規制緩和による市場誘導の2種類の財政政策に大別できる。

     

     安倍政権下では3か年緊急対策のような財政出動と、未来投資会議などでの検討成果を中心とした規制緩和を適切に組み合わせながら、経済成長を実現してきた。

     

     一方で、「既得権益にとらわれずに規制の改革を全力で進める」とする新首相。規制緩和は社会経済の“体質改善”としての効果は高いものの、景気減退局面などで即時的な効果は期待しにくい。新型コロナウイルスによる経済への悪影響が顕在化しつつある中では、即効性のある景気下支え策が求められるはずだ。

     

     行政を対象とした規制改革(行革)の動向にも注意が必要だ。菅氏は05年の第3次小泉内閣時に竹中平蔵総務相の下で総務副大臣を務め、06年の第1次安倍内閣で総務相に起用された。当時は政府の地方分権改革を推進し、この動きは08年の地方整備局を含む国の出先機関の統廃合を盛り込んだ地方分権改革推進委員会の第2次勧告につながった。

     

     出先機関の統廃合は二重行政の排除などのメリットがうたわれるが、現状で指摘されている自治体の職員数の減少と業務量の増加を鑑みると、過度な統廃合は弊害を生みかねない。

     

     例えば、TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)などは、数多くの災害で自治体の早期復旧に貢献してきたが、国の出先機関が減らされれば、地域に精通した国職員が少なくなってしまう。地域企業など民間を活用するのなら、改革と同時に受け皿となる枠組みの整備が併せて求められることは言うまでもない。

     

     「国民のために働く内閣」を掲げる菅新政権には、激甚化する災害から国民を守るという意味でも積極的な働きが求められている。

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    掲載日: 2020年9月18日 | presented by 建設通信新聞

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