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  • 建設論評・ウィズコロナと分散化経済

     テレワークやリモートワークなどにより、通勤や出張のような移動が少なくなったことで、仕事の内容も変化しつつある。仕事場であるオフィスについても、1カ所にスタッフを多く集める集約的な大型オフィスから少人数に分散化する傾向が見られる。例えば本社機能に対するサテライトオフィスである。言い換えればオフィスのABW(Activity Based Working)化とも言えよう。仕事の内容や住む場所に応じて、多様な働く場所を提供することである。利便性の高い場所にいくつかのサテライトを分散的に配する、いわば、ネットワーク型の企業形態である。

     

     その最先端にあるのが「ギグ・エコノミー」である。ギグとは音楽業界の用語で、ミュージシャンがその場限りで行うセッションのことを指す。ここからインターネットを通じて、単発の仕事を受注する働き方や経済形態のことをギグ・エコノミーと言うようになった。そのように働く人たちをギグ・ワーカーと呼ぶ。そうしたアドホックな事業形態が、新型コロナウイルスによってさらに多くの関心を呼ぶようになってきた。

     

     米国の人材業界専門メディアのSIAによれば、2018年の米国でのギグ・エコノミーの人材規模は5300万人、経済規模は1.3兆円に上るという。日本でもよく見かける、いまはやりのウーバーイーツもその典型である。そのウーバーイーツを運営するウーバー・テクノロジーのような、自動車の配車事業などで働く人の多くがギグ・ワーカーである。そのほか、個人宅の宿泊を仲介するAirbnbなどもギグ・エコノミーの代表的な企業として知られている。インターネットの時代にあって、個人が個人事業者として働きやすい環境が急速に整ってきたということであろう。

     

     しかしながら、こうした利便性が先行するギグ・エコノミーがこれからも労働市場におけるトレンドであり続けることになるのかについてはいくつかの疑問もある。ワーカーにとっては安定的な雇用形態が確保されていないことや、参入障壁が低い単純労働の場合では報酬額が低下することが考えられるからである。こうした状態が放置されていては、ギグ・エコノミーが長続きしないばかりか、一過性のトレンドで終わる可能性が高い。ウーバー関連企業も同様なトラブルを抱えている。

     

     しかしここで看過できない重要な問題は、新型コロナによって見えてきたデジタル・ネット社会における大型化から分散化への流れである。ネットワークの力によって、小さな個が大組織に依存することなく、その才能や能力を自由に、自立しながら、発揮していく傾向はますます拡大していくことは言わば必然だと言える。ギグ・エコノミーのスタートアップ企業が増加し、そこで働くワーカーも増えていくだろう。しかしながら、そうした個の自由の背後には社会的なリスクが必ず存在している。そのリスクとどのように向き合うのかが問われなければ、その可能性は開くことはない。

     

     ギグ・エコノミーが展開の成り行きを試されている。(遍)

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    掲載日: 2020年9月29日 | presented by 建設通信新聞

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