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  • 建設論評・ダム統一運用に期待

     ダムは、治水と利水という目的のために古代から大きな役割を果たしてきた。日本でも現在1400基を超えるダムが活躍している。

     

     そのダムの基本的な問題は、治水ではダムを空にして洪水に備え、利水では満杯にして渇水に備えるというように、運用方法が相反することである。

     

     ところが近年の異常豪雨では、ダムの水位が「洪水時最高水位」を超えると予測されるため「異常洪水時防災操作」によりダムの放流量を流入量まで増加させ、下流で氾濫が起こる事態が生じるようになった。これを解決するには、治水容量を増加するためにダムを新設するか、既存ダムを嵩(かさ)上げするなどの対策があるが、いずれも極めて困難な事業である。

     

     そこで政府は「既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議」を設け、「ダムの統一運用」により多目的ダムや利水ダムの利水貯留量を事前放流し、空いた容量を治水に転用することを検討してきた。しかし、貯めた水を捨てるというのだから利水側として容易に納得できるものではなかった。

     

     昨年12月に利水側が治水利用に同意をしたのは、洪水氾濫の頻発によるダムに対する社会の批判的動向、気象工学技術の向上により降雨予測が外れ、いわゆる「空振り」となる可能性が低下したこと、さらに空振りの損失を国が補填(ほてん)するとなったことからである。

     

     ダム統一運用の管理責任を持つ国土交通省は水系ごとに利水者と治水協定を結んだが、これにより全国の1級河川のダム955基、容量91億m3が対象となり、現在の治水容量46億m3が約2倍に増え、大きな治水効果が期待されることとなった。また都道府県管理の2級河川のダムについても同様な協定締結が進んでいる。

     

     さっそく7月豪雨では中部、9月の大型台風10号では九州と四国で事前放流による洪水調節が行われた。事前放流で最も重要で、また最も困難なのは降雨の予測である。それと同様に重要なのがダム流入量、下流の流量の予測である。これらについて気象工学、河川工学の一層の発展が望まれている。

     

     気象工学が発展すれば高い精度の長期降雨予測が可能となり、現在行われている洪水期に水位を「洪水貯留準備水位」まで下げておく方式が緩和され、統一運用が進み治水、利水にダムが一層効果を上げるようになるであろう。

     

     ここで忘れてならないのは、治水は既存ダムだけで行うのではなく、下流の堤防・河道・遊水地そして新設ダムなどのハード、開発抑制・避難などのソフトを総合した事業だということである。これは既に「流域治水」として示されている。

     

     そのためにも今期の事前放流における効果と降雨予測の精度、貯水位回復の状況、問題点などができるだけ早く明らかになることを期待したい。 (宙)

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    掲載日: 2020年10月8日 | presented by 建設通信新聞

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