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  • 建設論評・「1+1=?」

     「1+1は2にならない」。企業合併の話で、かねてから建設業界ではよく耳にしてきた台詞だ。要するに、2社が合併したとしても業績面などでは単純に合算規模になるわけではない、ということだろう。ゼネコンの合併といえば、これまで不況下で実施されたケースが多く、経営改善などに向けた銀行主導による企業再編が大半を占めてきた。

     

     金融機関などに優先株などを握られてしまうと、経営の自由度は格段に低下する。人員削減、海外事業の撤退などを余儀なくされた企業も複数ある。そして合併提案だ。不況下での企業再編は最終手段の一歩手前でもあり、「救済合併」という言葉も台頭した。過去には、もしかすると経営者や社員の意向に沿わなかった合併があったかもしれない。

     

     もちろん本来であれば合併によって「2」を目指すべきだが、企業存続という背に腹は代えられない事情から「1・5でもやむを得ない」として、断腸の思いで金融機関からの合併提案を受け入れた経営者もいただろう。

     

     平成の終盤から堅調に推移してきた建設業界の業績だが、現在、業界全体の受注高は既にピークアウトしたとの見方がある。さらに新型コロナウイルスの影響で、受注競争に変化の兆しが出てきたのも事実だ。一部の案件では、熾烈(しれつ)な受注競争が展開されている。公共事業でも応札価格が重なり、くじ引きで落札者が決定するケースが増えてきた。

     

     ゼネコン各社には、平成不況の記憶が拭い去れない世代がまだ数多く残っている。入札は心理戦でもある。新型コロナなどのネガティブ要因は、必要以上に競争をあおる。歴史は繰り返されるのか。

     

     今後、必要になるのは“攻め”のM&A(企業の合併・買収)だろう。「2」ではなく、「2・5」や「3」を目指すべきだ。異なるカルチャーを持つ企業の血が混じり合うことで、さまざまな化学反応が期待される。競争激化の兆しが出てきたとはいえ、まだ不況下とは言えない。不況になってからの対処療法では手遅れになる。

     

     最近のM&Aでは、日本ペイントホールディングスの事例がある。シンガポール塗料大手であるウットラムグループに第3者割当増資を実施する一方、その資金でウットラムのアジア子会社を買収する仕組み。

     

     外資企業への身売りといえば、業績不振に陥った家電メーカーなどのイメージもあるが、日本ペイントの場合は“攻めの身売り”とも言える非常にユニークな手法だ。株の希薄化などのトレードオフも首をもたげるが、肉を切ってまで骨を強化した。骨がなければ肉は付かない。つまり、未来に向けた実利を選んだということだろう。

     

     こうした高度なM&Aは、経営者の志向や発想はもとより、さまざまな条件やタイミングが一致しなければ成立し得ない。一方、製薬業界などでは、過大な買収費用が重荷として懸念されている事例もある。もちろんすべてが成功するとは限らないが、企業の未来を見据えるならば無策は避けたい。建設業界でも、こうしたダイナミックなM&Aが実現する日が来るだろうか。

     

    (泪)

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    掲載日: 2020年10月26日 | presented by 建設通信新聞

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