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  • 建設論評・血の通ったDXを

     政府が7月に閣議決定した『経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2020』に改めて目を通すと、ウィズ・アフターコロナ時代に質の高い経済・社会を実現するキーワードとして「デジタル化」が数多く出てくる。デジタル化の推進は生産性を引き上げ、経済成長を主導するとともに、より便利で豊かな生活を実現する上で重要な役割を担うとしている。

     

     新型コロナウイルス感染症の対応では、国民が安心して簡単に使うことができる行政の情報システム構築が不十分だったことや、国・地方自治体でシステムや業務プロセスが異なり、横断的な活用に課題があることが浮き彫りになった。骨太方針では、行政分野を中心に社会実装が進まず、先行諸国の後塵を拝しているデジタル化で巻き返しを図る意気込みを前面に押し出している。

     

     デジタル化への取り組みは、民間が先行し官側が遅れる「官民格差」が、推進のボトルネックになっていることが経済界からも指摘されているが、ここにきて格差解消に向けた動きが活発化している。

     

     政府が9月に開いた、行政のデジタル化推進に向けたワーキンググループの会合で菅義偉首相は、省庁の縦割りを乗り越えて2025年度末までに必要なデジタルトランスフォーメーション(DX)を完成するための工程表を作成するよう指示するとともに、地方自治体間で異なる業務システムについて25年度までの統一を目指す方針を表明した。

     

     全国知事会も、行政サービス手続きの原則オンライン化などを求める「デジタル社会の実現に向けた提言」を政府に提示し、菅政権が掲げる行政のデジタル化を都道府県も推進する方針を示すなど、電子行政実現への取り組みを本格化している。

     

     建設産業界では、生産性向上に向けてさまざまなデジタル技術の活用が進んでいるが、建設生産プロセスのさらなる効率化には行政サイドの電子化対応が欠かせない。政府は20年内にも工程表を策定する予定だという。地方自治体の業務システムが統一されれば、発注者ごとに異なる様式での工事書類の作成が不要になり、提出書類をめぐる非効率なやりとりが大きく改善するかもしれない。

     

     DXの推進は建設産業界にも大きなメリットをもたらすことが期待できるが、デジタル化に対応するための人材確保や機器への設備投資は中小建設業にとって大きな負担となる。全国知事会は提言の中に、ソフト・ハード両面でのデジタル・デバイド対策の拡充を盛り込み、光ファイバー網などの情報通信基盤の適切な整備による都市と地方との「デジタルサービス格差」の解消などを求めている。

     

     DXのそもそもの概念は「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」ことだという。急速なデジタル化は、デジタル・デバイドの拡大や、「豊かな生活」の偏在を助長する危険性もはらんでいる。利便性の向上や効率化に拘泥することなく、弱者にも目を向けた、「血の通ったDX」の推進が求められる。 (音)

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    掲載日: 2020年10月28日 | presented by 建設通信新聞

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