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フォーカス・公共工事設計労務単価の行方/ 市況停滞の影響懸念/技能者への適切な支払い重要/設計労務単価に「コロナ係数」を
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>8年連続で上昇を続けてきた公共工事設計労務単価が重大局面を迎えている。2020年度の全職種平均値は最高を更新したものの、上昇率は過去8年で最小となるなど一服感が出ていた中で、新型コロナウイルス感染症が直撃。今後、市況の停滞が長引けば建設企業への影響も避けられない。さらに働き方改革に向けた週休2日などの取り組みでは、技能者の賃金水準の維持が担い手確保のために重要な課題だ。国会議員や建設業団体からは積極的な対応を求める声が相次いでいる。
17日の衆院国交委員会では、21年度の公共工事設計労務単価が議論の俎上(そじょう)に載った。立憲民主党の松田功衆院議員は働き方改革関連法の建設業への全面適用に向け、労務単価の政策的引き上げの必要性を主張した。
国土交通省の青木由行不動産・建設経済局長は、有給休暇の取得義務化を踏まえ、義務化分の有休取得が可能になる費用を20年度の労務単価に反映したことを説明。その上で、「働き方改革関連法の全面適用に向けて、さまざまな取り組みが行われている。休暇の取得状況や労働時間の変化など、労働市場の賃金支払いの実態を正確に把握して労務単価の設定に努力する」と答弁した。
労務単価は、毎年10月に実施する公共事業労務費調査の結果を基に算出するため、基本的に実際に支払われている賃金の増減が上昇・下落に直結する。一方で、13年度の労務単価に関しては、社会保険料など法定福利費相当額を反映するなど政策的に単価算出を変更した経緯がある。
本来、法定福利費相当額が支払われていれば、その分の支払額が上昇し、労務単価に反映される。しかし、その原資がないことを理由に法定福利費相当額が支払われず、技能者が社会保険に加入できない状況にあったことから、負のスパイラルを脱却するための当時の判断だった。
今回の働き方改革に対応するための経費にも「『鶏が先か、卵が先か』の議論ではないが、同様の判断はあり得る」(国交省幹部)と検討の余地はある。
また、委員会の答弁で青木局長は労務単価の引き上げだけでなく、その浸透にも言及した。「技能者の処遇改善、働き方改革を進めていくには請負代金が下請け、孫請け間にも適切に支払われ、適切な賃金、雇用に伴う必要経費が行きわたることが大事だ」と強調。「下請事業者への代金支払いが適切に支払われていないという現場の声も依然としてある」としており、確実に技能者が受け取れる施策の深化の観点も重要になる。
公共工事設計労務単価を取り巻く課題は、働き方改革への対応だけではない。新型コロナによる市況の停滞が賃金減少に影響するのではないかといった懸念の声が上がっているからだ。公共工事の受注は堅調に推移しているものの、民間の建築などで既に競争激化の声が聞こえ始めており、建設企業の収益悪化が技能者への賃金支払いに影響することも見込まれる。
10月に関東地方整備局と意見交換した群馬県建設業協会の青柳剛会長は、新型コロナの影響を踏まえ、設計労務単価に「コロナ係数」を考慮することを提案。「ことしは新型コロナウイルス感染症の影響も踏まえ、『コロナ係数』などを考えて設計労務単価を決めてほしい。この半年間で現場が遅れ、作業員の月収が下がり、それがそのまま反映され、設計労単価の上昇が止まってしまう可能性がある」と懸念を示していた。
労務単価は個々の契約を拘束するものではないが、労務単価の下落は賃金の減少が始まっているシグナルと捉えることもできる。受注競争のしわ寄せが技能者の賃金に真っ先に及ぶことになれば、直近の担い手確保・育成の取り組みが水泡に帰してしまう可能性もあり、適切な対応が求められる。
残り50%掲載日: 2020年11月19日 | presented by 建設通信新聞