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  • 特集・ダム2020(1)

    【水災害リスク増大で高まる役割/ダム特集2020】

     

     平成30年台風21号、令和元年東日本台風、令和2年7月豪雨、同台風10号と、近年の災害は激甚化が進んでおり、“想定外”の被害が各地で頻発している。そうした中、7月の記録的豪雨で氾濫した球磨川の治水対策をめぐり、熊本県の蒲島郁夫知事が川辺川ダム計画の白紙撤回から、ダム建設に方針転換した。地球温暖化に伴う気候変動に関して、すでに研究者や行政は、科学的な将来予測をベースに「後悔しない気候変動適応」を模索し始めている。これまで治水・利水に効果を発揮してきたダムの、その役割への期待がますます高まっている。

     

    【国土交通省水管理・国土保全局長/井上 智夫/激甚・頻発化する洪水・渇水/「事前放流」推進へ財政優遇も 】

     

     近年、雨の降り方が激甚化しており、毎年のように全国各地で頻繁に記録的な豪雨災害が発生しています。令和2年7月豪雨では、7月3日から7月31日にかけて、日本付近に停滞した前線の影響で、暖かく湿った空気が継続して流れ込み、各地で大雨となり、最上川や江の川、球磨川など国が管理する7水系10河川、県が管理する58水系193河川で決壊などによる氾濫が発生するなど甚大な被害が生じました。犠牲となられた方々に対して謹んで哀悼の意を表しますとともに、被災された方々に改めて心からお見舞いを申し上げます。

     

     今後、気候変動などによる降雨の更なる激甚化、頻発化が懸念される中、気候変動による外力の増大に対して、河川の上流で洪水を貯留し、下流の一連区間の水位を下げるダムの整備が重要になってきております。国土交通省所管のダム事業は、現在、68事業を進めており、2020年度予算では足羽川ダム建設事業など4事業で新設ダムの本体工事に着手する予算を新たに計上しております。また、ダムは運用の変更や施設の改良によって的確に対応する可能性を有しており、国土交通省では、ダムの新設に加え、ハード・ソフトの両面から既設ダムの機能向上を図る「ダム再生」の取り組みを行っているところです。ダム再生は、利水容量を洪水調節に活用するなどの運用改善による新たな効果の発揮、堤体のわずかなかさ上げによる大幅な貯水容量の増加、放流管の増設など新たな水没地を生じさせない機能の向上など、短時間で経済的に完成させるといった特長を有しています。国土交通省所管のダム再生事業については、20年度から新たに5つのダム再生事業に着手しており、現在、30事業を進めているところです。

     

     また、気候変動による水災害リスクの増大に備えるために、これまでの河川管理者などの取り組みだけでなく、上流から下流、本川・支川という流域全体を俯瞰し、国、市町村、企業、地域住民の方々など、あらゆる関係者が協力してハード・ソフト一体の治水対策に取り組む「流域治水」を進めているところです。ダムに関しては、河川管理者によるダム建設・再生に加え、利水ダムなど、既存ダムの洪水機能強化として、大雨が予想される場合に、河川の水量が増える前に、利水を目的として貯められている水を一時的にダムから放流し、より多くの洪水をダムに貯められるようにする「事前放流」の取り組みを利水ダム管理者や関係省庁と協力し、ことしの出水期から開始したところです。20年度においては、全国の計122ダムで事前放流を実施しました(10月27日時点)。こうした利水ダムなどにおける事前放流のさらなる推進のために、20年度より、1級水系の利水ダムへの損失補填制度、利水者による施設整備への補助制度を創設しており、現在、事前放流に伴う損失補填制度の2級水系への拡大、河川管理者による新たな施設整備制度の創設、事前放流に関する放流施設の整備などを行った場合の税制優遇について検討をしているところです。

     

     近年、気候変動による影響が顕在化しつつあり、気候変動への対応は待ったなしの状況といえます。今後、水害や渇水のさらなる激甚化、頻発化が予測されている中、ダムの役割はより一層大きくなってきます。皆様の引き続きのご支援とご協力を心からお願い申し上げます。

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    掲載日: 2020年11月30日 | presented by 建設通信新聞

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