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技術裏表・アサヒテクノ「キャビテーション工法」
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【地盤圧密2ヵ月で最大30cm沈下/衝撃荷重などシステム化】
アサヒテクノ(高橋茂吉社長)の真空技術を使った地盤圧密促進工法「キャビテーション(CVT)工法」が、静岡県袋井市で行われている造成工事で威力を発揮している。同社が得意とする強制的に地下水を排水して軟弱地盤などの圧密を促進できるスーパーウェルポイント(SWP)工法の進化形となるもので、実質2カ月で最大約30cmの地盤沈下を計測している。
SWP工法の基本原理は、地下水をくみ上げる井戸内を真空状態にして負圧をかけて(負圧伝播させて)間欠排水するもので、地下水位を低下させたい対象エリアだけの水をくみ上げる、いわゆるスポット揚水ができるのが特徴。地下水が間欠吸引される際に生じる圧力差により、地盤内では短時間に気泡の発生と爆縮が起きるCVT(空洞)現象と相似の現象が発生することも確認されており、スポット減圧や間隙水の水蒸気化、爆縮による衝撃波などの効果で、類似工法に比べ、より深く、より広範囲の揚水が可能だ。
同社はこのSWP工法をベースに、用途に応じて多くの応用技術を開発し、それらを組み合わせた独自工法を実用化しており、CVT工法もその1つ。特に袋井市での地盤改良では、盛土に代わる荷重用に振動ローラを使っているほか、大型ボーリングマシンで空気圧を作用させるステップ荷重(基幹のSWPを補助する、吸気揚水もできる装置「Qin-TAKO」)、新開発の自動CVT発生装置による衝撃荷重などをシステム化して圧密促進させている。
◆自動CVT発生装置が連動
造成現場は東名高速のインターチェンジに近く、幹線道路に面し民家が隣接。北側には里山も迫っており、かつては小さな沢があったと見られる比較的平らな地形だが、一帯は表層3mほどが有機質土(ピート)の軟弱地盤で覆われ、その下10mくらいまで粘性土層、さらにその下層に透水性の高い砂れき層が分布し帯水層を形成している。造成完了後は、物流倉庫やメーカーの部品組立工場などが立地する予定だ。
CVT工法を投入したのは9月。第1ステージとしてSWP、Qin-TAKOによる地下水の真空吸引と揚水を行い、粘性土の間隙水圧を軽減。第2ステージでSWPに自動CVT発生装置を連動させるとともに、日中の8時間のみQin-TAKOで圧気と吸気の切替運転をし(夜間は吸気のみ)、自重8t(衝撃荷重18t)の振動ローラで転圧して地盤を圧密沈下させている。最終的には第3ステージとして元方ゼネコンによる盛土が終わるのを待って、再度SWPで揚水しながら振動ローラで転圧して目標高さまで沈下させる計画で、現状は第2ステージの段階だ(ただし、第3ステージの施工は未発注)。
◆データ収集進め設計法確立へ
11月下旬、SWP工法の設計法や施工法の確立を目的に活動中のCVT研究会(山根隆行会長)が現場見学を行った際、山根会長と、学術分野から研究会活動をサポートする山口大学の兵動正幸名誉教授、中央大学の有川太郎教授らに同行取材した。
アサヒテクノの高橋社長、高橋慶吉専務らによると、現場ではSWP4本(井戸の深さ18m)、Qin-TAKOを固定15孔、移動22孔を設置・作動させており、沈下は10-30cmを計測しているという。SWP1本当たりの負圧伝播が及ぶ範囲は粘性土で有効半径60m程度で、その範囲の地下水を吸引、地上排水している。
当日は明け方から本降りの雨で、現場にはいたるところに水たまりができていた。その水たまりからはQin-TAKOによる圧気で地下から空気が吹き上げている様子が観測され、CVT工法が確実に作用していることも目視できた。
SWP工法は地盤の締固工法として軟弱地盤改良、液状化対策、地すべり対策用など国内外で370件弱の施工実績があり、48件の特許があるものの、一般工法としての設計法や施工法が確立されていないため、今回の実績を含めデータ収集が進むことでCVTの発生と効果などの理論化を後押しするとともに、設計法確立などの取り組みも加速するとみられる。
残り50%掲載日: 2020年12月4日 | presented by 建設通信新聞