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  • 炭鉱のカナリア〈デジタル化〉

    【「属人化」から「標準化」急ぐ/中小にも導入拡大/効率ですべては解決できない】

     

     新型コロナウイルス感染拡大に歯止めのめどが立たない2021年、建設産業の各トップの競争に対する意識は、「無理をしない」ことでほぼ一致する。もう1つ共通するのが、デジタルやリモートといった技術革新への取り組みが「避けて通れない」との認識だ。新型コロナウイルス感染拡大を受け、中小元請けでも導入が拡大したIT化は、現場と本社・事務部門の業務と働き方を大きく変えた。全国企業では当たり前になりつつある、部門間連携とIT化による業務見直しに伴う効率化の取り組みが、中小企業まで浸透してきた形だ。

     

     新型コロナ対応に追われた20年。東京都内の地方自治体発注土木工事を受注した地元中小元請企業に所属する現場代理人Aさんは、毎日夕方6時過ぎには現場事務所を後に帰宅する。長時間労働の代表例でもある現場技術者が残業せずに帰宅できるのは、現場作業後の書類作成業務がないからだ。技術者に代わって現場書類を作成するのは本社管理部門の女性社員。IT化の進展によって中小企業でも現場のバックアップを効率的に行えることは、中小の働き方改革実現の先行きに明るさをもたらす。

     

     とはいえ施工部門を統括するAさんの上司は一抹の不安が拭えない。「会社が効率化を進めるのは当然だが、このままいけば技術者が発注者から求められる書類の意味も理解できなくなるのではないか。10年、20年後が心配だ」

     

     デジタル化を先進的な言い方に変えれば「建設DX(デジタルトランスフォーメーション)」。このDXへさまざまなアプローチから取り組む設計、ゼネコン、設備、メーカーなどの全国企業が急いでいるのは、「プロジェクト」と「生産体制を含む業務」という2つの視点で否応なくデジタル化が今後も進むことが間違いないからだ。プロジェクトのデジタル化は顧客・発注者らへの提案競争に勝つための条件だけでなく、顧客からの要求でもある。

     

     また建設産業に構造転換を促すインパクトがありながら結果的に構造転換が進まなかった、リーマン・ショックといまとの決定的な違いは、人口減少を理由に労働集約型産業の構造転換が否応なく迫られていることだ。対応しなければ、産業規模の維持はできない。解決には省力・省人・自動化などによる生産性向上しか供給力を維持する手段はない。そしてこの生産性向上のかぎを握るのが、デジタル化・DXという構図になる。

     

     しかし、BIM・CIMの活用といった「プロジェクトのデジタル化」と「自動化など生産システムや管理部門を含めた業務のデジタル化」を進めれば、それだけで明るい産業が見えるわけでもない。

     

     例えば、大手・準大手ゼネコンなどが進めている、業務効率向上を目的にしたあらゆる仕事の「見える化」「標準化」は、見方と言い方を変えれば「属人化」からの脱却だ。建設生産システム、特に建築が典型的な労働集約型だとするなら、さまざまな工程・工種ごとで人の能力やノウハウに依拠してきた部分を、省人・省力化へ向けた工場生産や自動化などを組み合わせ新たな生産体制の構築が必要不可欠になる。

     

     ただ、すべてが新たな生産体制に移行できるわけではない。デジタル化が業務効率に寄与しても、技術者・技能者の業務のすべてを代替することは不可能だ。大手や準大手などゼネコン各社が協力企業の技能労働者の確保と育成への支援強化を急いでいるのも、デジタル化・DXだけでは新たな生産システムを構築できないからだ。

     

     業務の属人化脱却を進める一方で、人材確保と教育にも力を入れる元請各社の姿勢が浮かび上がる。建設産業で脚光を浴びるデジタル化・DXはさまざまな波紋を呼ぶ。

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    掲載日: 2021年1月6日 | presented by 建設通信新聞

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