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フォーカス・新型コロナと外国人技能実習
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【出入国制限で受け入れ停滞】
新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延で、外国人技能実習生の日本への出入国が停滞している。技能習得支援を通じた国際協力を基本理念とする技能実習制度は事実上、現場作業を補填(ほてん)する役割を併せ持ち、日本企業が実績を積み重ねて構築してきた実習生の“受け入れ”と“送り出し”の循環が途絶えることは、相手国発展への寄与だけでなく、国内労働力の低下にもつながる。建設業でもその影響が表面化しつつあり、深刻化が懸念される。
◆建設業も実習生減少が顕在
東京都中小建設業協会(山口巖会長)の会員企業15社を含め、1月時点で計17社が加入する都中建協同組合(佐久間一三理事長)は、建設業に関する外国人技能実習生の受け入れ業務を実施している。
事業開始から着実に受け入れ数を伸ばし、2019年は25人にまで拡大した。ただ、コロナ禍が猛威を振るい始めたことで状況は一変。20年は4人にとどまり、21年も2人と低調だ。
同協同組合の富田裕国際事業部長は、受け入れ減少の要因を感染症に伴う入国制限のほか、「会員企業が受け入れの決め手とする実習生候補との直接面接ができないことが背景にある」と説明する。
これまで受け入れてきた実習生の国籍は、建設業全体の傾向と同じくベトナムが大半を占め、フィリピンなども増えつつある。企業側が受け入れ希望を表明し、実習生が日本に入国するまでには、手続きなどの関係から通常6カ月程度がかかる。受け入れを希望する会員の代表者は例年4-5月に相手国に渡航し、実習生候補と面接する。受け入れが決まれば、実習生は10月ごろに入国するのが一般的な流れとなっている。
受け入れ企業が雇用の可否を判断する上で重要視するのが、顔を合わせて対話する直接面接。「受け入れる企業には(実習生に)しっかりと日本で技能を身に着けてもらい、自国の発展に生かしてもらうという責任が生じる。経営者自身の目で実習生候補の人柄や能力などを確認したいとの思いが強い」(富田部長)だけに、航空便の運休・減便によってスケジュールが組みづらく、渡航できたとしても一定期間の隔離措置などが伴う現状では「実習生の受け入れに踏み切れない会員が多い」という。20、21年に受け入れた6人の実習生はいずれもオンラインによる面接で採用を決めた。
会員からの実習生の受け入れ希望は現在も約20人に上るが、各社とも現下の情勢を踏まえて対応を保留している。
一方、現在受け入れている実習生の一部は実習期限を迎えている。同一企業で同一内容の実習という一定の条件を満たせば特定活動に移行でき、3-6カ月の実習延長が認められる。ただ、その実習生もいずれは自国に帰国する。新たな実習生が引き続き受け入れられなければ、各社が相手国との信頼に基づいて築き上げてきた受け入れと送り出しの循環が途絶えてしまう。
富田部長は「(都内だけでなはく)全国的に同じような状況ではないか」との見方を示す。総務省や厚生労働省などのデータをみると、建設業就業者数に占める外国人労働者の割合は08年が約0.2%だったの対し、19年には9倍増の約1.8%まで拡大。建設事業遂行にかかる外国人材の存在感は高まっている。
また、建設業の外国人労働者は9万3214人(19年10月末現在)。うち技能実習は約70%(6万4924人)に達し、その比率は全産業の中で最も大きい。在留期間が長いものの、資格取得が難しい特定技能に比べ、制度が活用しやすい技能実習には外国人材確保の観点で今後もニーズが残るとみられる。コロナ禍を契機として外国人技能実習生が減少していくことで、技能習得による国際協力と工事現場の生産能力への影響が危惧(きぐ)される。
残り50%掲載日: 2021年1月28日 | presented by 建設通信新聞