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建築学会・震災10年オンラインシンポ/逃げる必要ない国土を/複合災害に5項目提言
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>日本建築学会(竹脇出会長)は6日、オンラインシンポジウム「東日本大震災10周年を機に頻発する複合災害を考える」を開いた。複合災害への対応はハードだけでは限界があるとの認識に立ち、マルチハザード・リスク評価による「逃げる必要のない建築・まち・国土」の実現や、地域のストック・リスク・権利関連情報の包摂・共有を基盤にした能動的継承の推進などを提言した。学会は今後、都市・地域の文化、コミュニティー、住民の健康を災害後も保全するためのフレキシブルな戦略を議論し、実効性のある対策を提言していく。
冒頭、竹脇会長は「震災から10年が経過しようとする中、課題はますます大きく、多様化している。新型コロナによって経験したことのない難題にも直面しており、10年を契機にさらに議論を深めることは大変意義がある」とあいさつした=写真。
シンポジウムの開催に当たっては、人口減少・高齢化、レジリエントな建築・まちづくり、エネルギー消費と健康、長期的な放射能汚染被害地域での建築・まち・むらづくり、災害の記憶の継承をテーマにした分野横断の5ワーキンググループ(WG)を設置し、1年間にわたって課題や必要な施策を検討してきた。
5WGの報告や基調講演した歴代会長経験者6人からの提案などを踏まえ、シンポジウムでは、▽地域のストック・リスク・権利関連情報の包摂・共有を基盤にした能動的継承の推進▽マルチハザード・リスク評価による「逃げる必要のない建築・まち・国土」の実現▽エネルギーインフラの自立と健康に配慮した建築・まちづくりの実現▽被災者の生命・健康、コミュニティーを尊重した原発事故特有の長期的な復興と政策▽都市・地域のポテンシャルと歴史の積層の把握と評価--の5項目を提言した。
「逃げる必要のない建築・まち・国土」の実現では、最新の科学技術的アプローチによって、地震・風水害・地盤災害などの複合災害を考慮した全国の確率論的マルチハザードマップを整備し、それを基に国土のあり方の社会的コンセンサスを得た上で、レッドゾーン(開発・居住禁止エリア)とイエローゾーン(要注意エリア)を設定することを提案している。
能動的継承の推進では、各地域で起こり得る震災、気象災害の様態を精確に予測することは困難で、あらゆる様態の災害に対して地域のすべてを守り、すべてを復旧することはできないという基本認識を前提に、「人口高齢化・減少の中で地域のレジリエンスを高めるには、『何を守り継承するのか』について、各地域でコモンセンスが形成されるべき」と指摘した。
その上で、地域の建築ストックや土地利用、災害リスクなどの情報資産が発災前に整備されれば、いわゆる「事前復興」の一翼として、リスクコミュニケーションの活性化につながるとともに、被害状況に応じた居住再建などによる地域社会全体の適応的継承を戦略的に進めることができるとしている。
残り50%掲載日: 2021年3月9日 | presented by 建設通信新聞