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  • 技術裏表・キヤノン 映像空間ソリューションビジネスを展開

    【壁面投影で高精細な体験型空間】

     

     キヤノンは、これまで培ってきた最先端の映像技術と多様な分野のクリエーターを組み合わせ、顧客ニーズにあった映像空間を提供する「映像空間ソリューション」のビジネス展開を始めた。13日には体験型映像空間を構築した「百舌鳥古墳群ビジターセンター」(堺市)がオープン。自治体による施設新設事業などで建設会社との共同提案や新規開発物件における映像コンテンツ導入など、多方面で建設産業とのコラボレーションが想定される。

     

    ◆自治体やIR/MICEに狙い

     

     映像空間ソリューションの特長は、VR(仮想現実)用ゴーグルなどの視野を遮蔽(しゃへい)する装置を使わなくても、人間の視野を覆う150度方向の壁面に8Kカメラの映像を投影し、「まるでその場にいるような体験」ができる空間を生み出す。それを可能にしたのは、培ってきた世界最高レベルの映像技術だ。

     

     使用するカメラやレンズの情報と、焦点距離やスクリーンの形、視聴位置など視聴者の「見え方」の情報を元に、自然な見え方に修正して投影する。キヤノンIR/MICE事業推進プロジェクトの柴田真由子専任主任は「横長の映像や魚眼カメラで撮影した映像も、平らな面に投影した際に起きるゆがみを修正して映し出せる。暗い部分と明るい部分も同時に見える人の眼に近い『HDR映像』も活用する」と説明する。

     

     「予算や使用機材、建物(投影壁面)の大きさ、CG(コンピューターグラフィックス)などの素材にあわせて、投影する映像が自然な形に見えるよう、柔軟に調整できる」(同プロジェクトの須藤哲郎主幹)という柔軟さも、高い技術があるからこそ実現できる。

     

     堺市に13日オープンした「百舌鳥古墳群ビジターセンター」は、ビジネス展開後初の常設展示となる。高さ3.3m、長さ14.3m、半径5.1mの曲面スクリーンと床面(幅10m)に4Kプロジェクター3台、プロジェクター3台を使って映像を投影する。

     

     世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」は、あまりの広大さから、現地で古墳の全容を把握するのは難しい。今回の展示は、8Kカメラで空撮した映像をビジターセンターに投影することで全体像を体感できる仕掛けだ。当初はプロジェクションマッピングやジオラマも計画されていたものの、生の迫力が味わえない。パネルと映像を展示するビジターセンターも少なくないが、インターネットで誰もが取得できる情報の展示では集客力のある施設にはならない。

     

     「地域の文化と歴史を発信しつつ、“この建物でしか味わえない体験”をどう提供するか。誰もが気軽に体感できる方法を考えた」(キヤノンマーケティングジャパン自治体ソリューション企画課の阿部芳久主管)と、壁面投影を市に提案した理由を明かす。壁面への投影だからこそ、「隣にいる人と感動を分かち合うという、VRゴーグルでは得られない『感動の共有体験』を提供できる」(柴田専任主任)。

     

     だが、映像空間ソリューションをビジネス展開するには、撮影・投影技術だけでは魅力ある作品にはならず、“コンテンツ”が技術と両輪にならなければならない。キヤノングループでは、アートとテクノロジーの融合による新たな文化創造を目指した「キヤノンアートラボ」や公益財団「CG-ARTS」を通じて数々のメディアイベントを手掛けてきた。

     

     このノウハウを生かし、「社会貢献の色合いが強いCSRではなく、持続可能なビジネスとして展開しよう」(阿部主管)というのが『映像空間ソリューション』で、百舌鳥古墳群ビジターセンターでは実際にCGや空撮、アニメーション、音楽、音楽ミックス、演奏、展示エンジニアなど、多様なジャンルのアーティストやクリエーターを集め、空撮映像の上映にとどまらない見応えのある作品に仕上げた。

     

     ビジネス展開のターゲットはIR(統合型リゾート)やMICE(国際的な会議・展示会など)の事業者、自治体、博物館・美術館、企業、イベント興行主で、「建物空間をつくる段階から参加できれば、より作品の自由度は高まるし、既存建物でも柔軟な提案ができる」(キヤノンマーケティング自治体ソリューション企画課の中農剛司課長)と胸を張り、「まずは自治体で実績をつくり、民間市場に横展開していきたい」(同)と先を見据える。

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    掲載日: 2021年3月19日 | presented by 建設通信新聞

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