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話題縦横・土木学会/インフラ管理 自己完結からオープンへ
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【AI民主化で主役は土木技術者だ】
政府が強力に押し進める「生産性革命」を実現し、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、ロボットなど、生産性を劇的に押し上げるイノベーション(技術革新)の社会実装が加速化する中、土木学会(大石久和会長)の2017年度会長特別委員会の1つ「国土・土木とAI懇談会」(座長・坂村健東洋大INIAD学部長)は24日、『インフラ・国土管理における土木とICTの融合に関する提言』を公表した。データや技術といった、さまざまなものの「オープン化」が世界の潮流になっている中、土木技術者に対して、土木とAIやIoTなどの技術革新を活用するICTの積極的取り組みを求めたのが特徴だ。裏返せば、公物管理者や建設企業に多かったさまざまなデータや技術の「独自システム主義」からの脱却でもある。■国土・土木とAI懇談会/坂村健 座長
坂村座長は、インフラ・土木分野で今後、急速に浸透する技術として、「部品のトレーサビリティー(追跡可能性)としてのIoTが点検業務に、もう1つはAIとロボット」とした上で、特にAIについては「だれでも使える、AIの民主化と2012年に画像認識で飛躍的な成果を上げたことが、研究者以外の人たちにもAIが広がった」とした。
具体的には、「12年からこの5年間、AIが普及した時代ということは、逆に言えばAIが簡単に使える時代になった。だれもがAIを使える時代になったということは、AIをインフラの維持・管理など土木分野で活用する場合、これまでのような人工知能を研究してきた専門家ではなく、実際にAIを使う側で問題を理解している技術者、土木の専門家が先頭に立つべきだ」と強調した。
さらにインフラ分野でもAIが急速な進展をする理由として、「過去には囲い込まれていたAIを、AIの民主化としてグーグルが公開したことで、オープン・イノベーションによる新技術が拡大した。そのほかIoT(さまざまな多数のセンサーからの情報が集まる)からのビッグデータと、オープンデータ」の存在を挙げた。
坂村座長は提言のまとめとして、「独自システム主義、自己完結型マネジメントが限界であることは明らか。今後はオープン型マネジメントになるだろう。ただその場合、土木分野でだれがその役割を担うかだが、いまはプログラミングも簡単になっている。新卒者などに頼るのではなく、30歳、40歳代の土木技術者たちには社会人教育として学ぶ新しい教育も必要になる」と締めくくった。
*ICTとオープン化 今回の提言づくり成果シンポジウムで、国土交通省の森昌文技監や、日本建設情報総合センター(JACIC)の坪香伸理事、首都高速道路、NEXCO東日本、パシフィックコンサルタンツなどの報告で共通しているのは、安倍政権が強力に進めている、官民が保有するさまざまなデータを流通・活用する「オープンデータ」と、データベースが自己完結でデータの横展開がしにくかったことを解消する「インフラデータのプラットフォーム(共通基盤)化」、さらに公開するデータを使って技術革新を促す「オープンイノベーション」という2つのオープンと共通基盤化だ。
言い換えると建設産業界の第4次産業革命、Society5・0、i-Constructionなどすべての根底とも言える。坂村座長の報告で最大の話題となったAIについては、建設産業界でも設備企業がビッグデータを活用した異常予兆検知や最適化技術など、IoTやICTを使ったシステム効率化が進んでいる。そのため、2つのオープンと共通基盤化の具体的要素である、BIMやCIMで必要とされる、コンカレントエンジニアリング(業務の同時並行処理)、フロントローディングの位置付けが高まることで、相対的に設備企業の存在感が強まっている。また、近年は設備企業でも電気と空調それぞれを主力とする企業の連携強化、M&A(企業の合併・買収)など総合設備企業化を進める動きも進んでいた。
■現場知の技術移転にICT活用/大石会長の発言要旨
急速な少子高齢化・人口減少社会の中では、働く人たち(生産年齢人口)は付加価値の高い仕事をしてもらわなければならない。GDP(国内総生産)が維持できないからだ。そのためICTやAIが必要になるが、日本の場合問題がある。ITでは、世界の潮流がITに人が合わせるのに対し、日本は人・企業にIT(開発)が合わせている。だからコストは高くなるし、システムの融通性もない。
また日本の労働生産性は1990年から2014年までの25年間の向上率で世界126番目という体たらく。GDPにしても日本はデフレだから実質GDPは上がっているが、名目GDPは上がっていない。
一方、社会資本の老朽化(建設後50年経過)は、33年に道路橋40万橋の61%が、トンネルも41%に達する。一方で自治体の土木系職員数は減少し続けている。既に全国1788自治体のうち町の3割、村の6割で管理技術者が1人もいないという。
80年代、米国で橋梁の高齢化が“荒廃するアメリカ”と言われたが、日本でも通行止め橋梁が増加、同じ問題になりかねない。さまざまな経験を“現場知”とも言うが、その現場知が消滅しているとの指摘もある。ICTなど技術力で対応していかなければならない。
残り50%掲載日: 2018年5月31日 | presented by 建設通信新聞