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技術裏表・佐藤渡辺「アスファルト注入工法」
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【コンクリ舗装の空隙を充填/早期の交通開放実現】
佐藤渡辺が手掛けるコンクリート舗装の修繕工法である「アスファルト注入工法」が着実に実績を重ねている。本格展開を始めた1964年以降、国土交通省やNEXCOが発注する全国の案件で採用され、累計の施工実績は約1000件、30万㎡に上る。道路舗装の市場環境が新設から維持修繕へとシフトする中、同社は工法のさらなる改良を進めるとともに、舗装診断とセットで積極的に提案する考えだ。
◆累計施工実績は1000件、30万㎡
コンクリート舗装は目地部などから路盤材料が流出し、コンクリート版と路盤の間に空隙が生まれて車両の繰り返しの通行によりコンクリート版ががたつくといった不具合が生じる場合がある。そのため修繕工事では、空隙を埋める必要がある。
同社が得意とするアスファルト注入工法は、2mm程度の空隙に屋根防水などに使われる硬質のブロンアスファルトを充填(じゅうてん)し、沈下したコンクリート版を押し上げることでがたつきを解消する。
施工は、まず削岩機や人力により修繕する個所のコンクリート版を2-8㎡につき1カ所の割合で削孔する。アスファルトを円滑に注入するため、削孔した直径50mm程度の孔に圧縮空気を送り、土砂などを吹き飛ばす。続いて専用のアスファルト注入車から孔にノズルを差し込み、アスファルトを注入する。注入後は無収縮モルタルを充填して孔を塞ぎ、施工完了となる。
アスファルト注入工法の大きな特徴は硬化の速さだ。アスファルトは温度低下により硬化するため、セメント系材料や発泡性ウレタン材料を注入する工法と比べ早期に固まり、施工後は30分程度で交通開放を実現する。アスファルトは200度以上に加熱することで流動性が確保されており、充填性にも優れる。自走式のアスファルト注入車を使うため、1日で300-400カ所、約2000㎡の施工が可能で、効率的な修繕につながる。
セメント系材料を注入する場合は現場での混合が一般的で、空隙の状況によっては使用可能時間内の注入完了が難しく、材料のロスにつながるケースもある。一方、アスファルトではタンク内に材料が残って硬化しても、施工時に再加熱すれば使用可能なため、材料ロスを抑えられる。
同社がアスファルト注入工法に本格的に着手したのは1964年。浦賀重工業(現住友重機械工業)と提携してアスファルト注入車の第1号を完成させ、各地で実績を重ねた。しかし、機械のトラブルなどで注入を止めると、注入ノズル内部でアスファルトが硬化するなどの課題があった。
そのため、73年にはホットオイルヒーターによる保温システムを導入してノズル内部のアスファルトの硬化を防止するとともに、計量器などを千葉機械工業と合同で開発することで、現行機種の基礎となる車両が完成した。現在は千葉県八千代市の機械センターに2台のアスファルト注入車を配備し、全国の案件に対応している。
今後の改良点について坂本寿信技術研究所長は「アスファルト温度の低減化」を挙げる。専用車両には最大で6tのアスファルトを積載できるが200度以上まで加熱するには時間も掛かり、燃料も要していた。そのため、アスファルトの粘度を下げる材料の添加などによる低温化を検討しており、「加熱に掛かるコストの低減やCO2削減にもつなげたい」と話す。
また、コンクリート舗装の空隙対策の需要増加を見込み、神野稔久工事本部製品部長は「舗装調査とアスファルト注入工法をセットで提案していきたい」と意気込む。FWD(舗装構造評価装置)などで舗装面の現状を診断して補修計画を立案し、あわせてアスファルト注入工法をアピールすることで、採用拡大につなげる考えだ。今後は年間20-30件の施工を目標に展開していく。
残り50%掲載日: 2018年6月1日 | presented by 建設通信新聞