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建築へ/建築学会、都内でドローンシンポ開く/建築分野でもドローン活用を
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>◇法規制や技能レベルに課題も
土木分野で先行しているドローン(小型無人機)の活用を、建築分野でも進めようという動きが広がってきた。建築物の点検・調査や災害時の対応を省人化、効率化する効果が期待できるからだ。ただ、人や建物が多い都市部でドローンの利用を広げるには、飛行の安全確保といった課題もある。日本建築学会(古谷誠章会長)は5月17日、東京都内で「建築×ドローン2018」と題したシンポジウムを開催。専門家が最新の知見を持ち寄り、意見交換した。(編集部・遠藤剛司)
ドローンを活用するサービスの国内市場規模は今後、急速に拡大する見通しだ。「ドローンビジネス調査報告書2018」(インプレス総合研究所)によると、ドローンを使用した分野別のサービス市場規模は18年度見込みの363億円(うちインフラ点検業務38億円)が20年度に917億円(同219億円)、24年度には2530億円(同970億円)と、右肩上がりで成長すると見通す。
インフラ点検サービスの市場が急拡大する背景には建設業界の人材不足がある。ただ、その対象は現段階でダムや橋梁といった土木構造物が中心。構造物の点検や施工管理にドローンを活用し、生産性向上を図るケースは確実に増えている。一方、建築分野では期待の高さと裏腹に土木分野ほどドローンの活用は進んでいない。
建築分野でドローンの活用先として特に有望視されるのが、建築物の外壁や屋根の点検だ。建築基準法では一定規模以上の建物について、外壁の落下などの危険がないかどうか有資格者が定期的に点検・調査し、特定行政庁に報告することが、建物の所有者や管理者に義務付けられている。劣化した外壁タイルなどが剥がれ落ちる事例が過去にあり、規制強化を後押しした。
点検は従来、人の手による「全面打診」という方法で行われてきた。ドローンを使うことができれば、離れた場所から状況を把握できる。高所での点検作業に伴う墜落・転落リスクが軽減できるだけでなく、人件費など点検コストを安く抑えられる。
業界では、建築物の点検にドローンを活用するための実験が活発に行われている。シンポジウムで西武建設の二村憲太郎氏は、同社が行った公開実験の結果から、ドローンの活用によって高所作業車が不要になる分、点検コストが3割近く削減できたと報告した。
同学会の材料施工委員会に設けられたドローン技術活用小委員会に所属する建築研究所の眞方山美穂氏は、国土交通省の基準整備促進事業として赤外線装置を用いた「非接触方式」による診断手法と調査基準の検討に携わっている。眞方山氏は途中経過を報告し、「ある程度の光が確保できれば、地上の作業とほぼ同等の調査をドローンでも行える」との見方を示した。本年度はドローンを建物調査に使う際の基準案を作成するため、実際の建物で実証実験を行うとともに、測定精度のさらなる向上を図るという。
小委員会の主査を務める建築研究所の宮内博之氏は、建築分野にドローンを使うメリットとともに、課題も指摘した。課題の一つが都心のような人口集中地区でのドローン飛行が航空法で厳しく規制されている点だ。ドローンを安全に飛行させるには高度な操縦技術が必要で、技術を習得できる教育機関が整備されていないことも、大きな課題になっている。
宮内氏は飛行規制の緩和と併せ、オペレーター育成の重要性を指摘。「民間各社の英知を結集し、ドローンの活用を前進させていく」考えを強調した。ロボット開発など建設以外の分野も巻き込み、「産学官が連携しあって課題解決を目指すべきだ」とも述べた。
建物の点検・診断以外では、災害時の情報収集や被害の把握・記録にドローンが役立つとみられている。東大地震研究所の楠浩一氏は、16年に東北地方を襲った台風10号の被災状況調査にドローンを使用した事例を報告。将来的には、避難困難者の発見や通信網が復旧するまでの移動無線局に転用できると主張した。
シンポジウムは建築分野へのドローン普及を目指す「日本建築ドローン協会」(会長・本橋健司芝浦工業大建築学科教授)やドローンを用いて産業創出を狙う「日本UAS産業振興協議会」(理事長・鈴木真二東大大学院教授)など5団体が後援した。
建築学会はシンポジウムの成果を踏まえ、建築分野へのドローンの活用拡大についてさらに検討していく方針だ。
残り50%掲載日: 2018年6月1日 | presented by 日刊建設工業新聞