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  • 研究室訪問/法政大学デザイン工学部建築学科・川久保研究室/日本のプレゼンス向上へ

     ◇SDGsの成功事例を世界に発信したい

     

     「SDGs(持続可能な開発目標)を生かした建築・都市づくり」の研究で先頭を走る法政大学デザイン工学部建築学科の川久保研究室。SDGsは、15年9月の国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で示された貧困撲滅、経済成長、気候変動抑制、再生可能エネルギー利用の拡大など17項目の分野別目標。日本政府もその達成へ本腰を入れ始めた。川久保俊准教授は、「SDGs達成への取り組みの成功が世界における日本のプレゼンス向上につながる」と力説する。

     

     国連採択を受け、日本政府は16年5月、首相を本部長とする「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を設置。同年12月に「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」を決定した。指針の中で強調されたのが、「SDGsの達成に向けた自治体の積極的な取り組みの推進」と「科学者コミュニティーによる協力、支援の必要性」だ。

     

     川久保准教授は、建築環境・省エネルギー機構(IBEC、村上周三理事長)が政府の動きに合わせて立ち上げた自治体SDGs検討小委員会(現自治体ガイドライン検討委員会)に、幹事として参加。同委員会は、自治体レベルでSDGs達成に取り組むための具体的な方法論について検討し、17年3月、「私たちのまちにとってのSDGs(持続可能な開発目標)-導入のためのガイドライン-」を作成した。

     

     「各自治体が地域固有の施策を打ち出すことで、ローカルアイデンティティーの強化や地域の活性化を実現し、さらには国全体のSDGsの達成に貢献できる。研究室では『SDGs取組度を測る評価手法の開発』と『SDGsの地域実装方法の検討』の二つを軸に研究を進めている。研究対象は国内の自治体だが、その方法論は各国の地域政府にも通用するはずで、日本の成功事例を広く世界に発信できれば、持続可能な社会づくりの面で国際貢献できる」

     

     方法論の確立に向け、モデル自治体との協働によるSDGs実装の試行、自治体や企業のSDGsに対する認知度調査、自治体のSDGs達成度の見える化手法の開発、先駆的事例の発信・普及手段などを研究する。本研究は昨年、独立行政法人環境再生保全機構が公募した「環境研究総合推進費」に採択され、19年度末までに成果を取りまとめる。

     

     今年3月、IBECはガイドラインの第2版と、SDGsで示されている指標を国内事情に即してローカライズした進捗(しんちょく)管理のための指標を公表。ローカライズする作業には、川久保研究室の学生も一役買った。

     

     川久保准教授は「指標を活用して、各自治体のSDGsの取り組み度を分析し、具体的な内容を地図上で確認できるツールを研究室のホームページ上で提供したい。先進的な自治体の取り組み内容を知り、参考としてもらうことで、SDGs達成に向けた活動が全国的に展開され、地方創生にもつながる。10年、20年とデータを積み重ねていけば、SDGs達成に向けた活動の長期推移を把握できる科学的エビデンスも提供できる」と研究の目的を説明。

     

     その上で「法政大学の研究環境はとても恵まれていて、即時的成果を出すことに縛られず、中長期視点でじっくりと研究に取り組める。研究に対する学生の姿勢も真摯(しんし)で、世の中に有用なソリューションを提案したいという気持ちが伝わってくる。持続可能な世界の実現の一翼を担う人材を輩出することが目標であり、そのようなOB・OGと将来何かしらのプロジェクトなどで一緒に働くことが私の夢」と教育者としての熱い思いを語る。

     

     (かわくぼ・しゅん)博士(工学)。2008年慶大理工学部システムデザイン工学科卒。13年慶大理工学研究科博士課程修了、法大デザイン工学部建築学科助教。16年専任講師、17年准教授。長崎県出身、32歳。

     

     《川久保研究室HP

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    掲載日: 2018年6月20日 | presented by 日刊建設工業新聞

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