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  • クローズアップ・空調服/汗の気化熱で“涼” 現場の暑さ克服

    【夏場の作業能率10%向上/口コミで広がり、ゼネコンに波及】

     

     記録的な猛暑が続いた今夏、全国の建設現場で空調服(東京都板橋区)の“空調服”が活躍している。空間ではなく個人を涼しくすることで、屋外労働の最大の課題となっている“暑さ”をやわらげ、『一度着たら手放せない製品』として評価を高めている。同社の市ヶ谷弘司会長は「エアコンのない屋外で快適に作業でき、消費電力も非常に少ないため環境にも優しい。労働環境改善に貢献したい」と力を込める。汗の気化熱で涼を得る画期的な製品の開発から普及、今後の展開を市ヶ谷会長に聞いた。 市ヶ谷会長は1991年にソニーから独立し、現在の空調服の親会社セフト研究所を設立した。テレビのブラウン管測定器の開発・販売を手掛け、スーパーコンピューターにかかわる特許技術を開発するなど経営を軌道に乗せたが、テレビがブラウン管から液晶に移り変わる中で事業の柱となる新たな技術開発を模索する。

     

     その1つが水を冷媒にした冷却システムであり、「試作品を小型化するうち空調服にたどり着いた」という。当初はペットボトルからポンプとパイプで服の中に水を散布し、ファンで蒸発させていた。冷えるが水が漏れるなど問題も多く、「よく考えれば水を供給しなくても人間には脳の指令により発汗する仕組みが備わっていて、打ち水の原理で体温を調整している。ファンで外気を取り込み、汗をすべて蒸発させれば大きな冷却効果を得られる」という“生理クーラー理論”を発案した。

     

     98年から約6年の試行錯誤を重ね、2004年に試作品が完成した。1台何百万円もする測定器の販売から、数万円の単価に合わせ180度売り方を変える必要があり、まずはユーザーに「試し」で着用してもらうとともに、販売ルートを一から開拓するなど新たな試みに挑戦した。

     

     最も苦労したのが、「世の中に比較できる製品がなかった」ことだ。エアコンであれば電気代などを比較できるが、インターネットの通信販売が主体のため「暑いのになぜ長袖を着るのか」といった問い合わせには社長を始め社員が訪問して説明に回った。一時は経営の危機に瀕するが徐々に収益も増え、工場や建設現場を中心に「いつか広まる」と手応えを得ていった。

     

     実感したのは、あるクレームに対応した時だ。「ユーザーのご婦人から『うちの旦那を殺す気か』という電話をもらった。帰宅したご主人に確認したところ、点滴が必要なほど夏場の作業に苦労していたのだが、空調服を着用してから手離せなくなったそうだ。ただ電池が切れると地獄のような暑さになるため、その改善を求めて妻が電話してきた」と言う。そうしたユーザーからの期待に応える中で、自信を深めた。

     

     建設現場には名古屋の商社が鉄筋工に販売してから火が付き、肩当てなど現場用のオプションを充実させると他職種にも“口コミ”で広まった。「涼しく作業できることが導入費以上の効果を得られると判断していただけた。中小企業の経営者は判断が速く、急速に広がった」と分析する。

     

     ユーザーには夏場の作業能率が10%上がると実感してもらっている。「その歩掛かりで見積もると3万円(空調服一式+替えの服1着)の空調服を着て3年間作業すれば約60万円が改善できる。当社ではこれを『3360効果』と呼んでいる」と生産性向上のメリットを語る。さらに「現場でファン付きの作業着は目立つと思う。まずは職人さんに広がり、それを見たゼネコンの導入も急増した。作業能率と安全対策でも評価されている」と実感する。

     

     現在はヘルメット、リュックサックなどに展開するほか、義務化されたフルハーネス型安全帯にも対応している。市ヶ谷会長は「体調を崩してからではなく事前の対策として活用してほしい。建設現場は古い3K(きつい・汚い・危険)から新3K(給料・休暇・希望)に生まれ変わろうとしている。そこに空調服の“K”を加え、働き方改革に貢献したい」と意気込む。

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    掲載日: 2018年8月20日 | presented by 建設通信新聞

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