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現場から・陶朱隠園(タオヂュインユェン)/熊谷組台湾現地法人 華熊営造/
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【独創的な意匠の超高層芸術住宅/コンセプトは「環境への優しさ」】
熊谷組台湾現地法人の華熊営造が施工を進めてきた台湾・台北市の超高層住宅「陶朱隠園(タオヂュインユェン)」が高層の建物をねじったような美しい外観を見せ始めた。建物の最大の特徴は、DNAの二重らせん構造から着想を得た特徴的なフォルムだ。独創的なデザインを持つ。台湾だけでなく海外からも高く注目されている。 建物の規模はS造・基礎免震(すべり振り子型免震装置)、地下4階地上21階建て延べ4万2773㎡。高さは93.2m。2階から21階が住戸部分で、戸数は合計40戸。工事範囲は、躯体、外装、外構、設備工事、内装工事(共用部分、住宅部はスケルトン)。基本設計は、フランスの建築家であるヴィンセント・カレボー氏、実施設計は元宏聯合建築師事務所、構造設計は傑聯國際工程が担当した。
設計に当たっては、「The tree of city」を概念とした。外観上、手を組んだようにも見える建物は、DNAからヒントを得て、らせん状に複雑な変化をとげる遺伝子の基本形態をモチーフとした芸術住宅としている。ことし7月に台北市政府から使用許可を得た。
建物中央のコア部から左右に張り出すウイング部は、二層一体型トラス構造を使用することで、奇数階住宅内は柱のない空間になり、玄関扉からの135度の眺望を可能にした。建物地上部は、2フロア分の高さのトラスを中央コアとウイング部先端のメガカラムに架け渡す構造で、左右ウイング部が中央コア部分を中心としてフロアごとに4.5度ずつ回転することでメガカラムをねじれた形状にしている。
多機能エレベーターを建物の中央に配置しているため、愛車を玄関先まで乗り付け、大型芸術品や高価なコレクションを住宅内まで簡単に運搬できる。また、緊急時には救急車が各戸玄関前まで乗り付けることができ、プライバシーを確保しつつ、安全・速やかに搬送することができる。
プロジェクトは、米国の建物環境性能評価指標LEED認証、台湾のEEWH緑建築候補認証を取得。有機性廃棄物の再利用のほか、建物一体型太陽光発電、雨水リサイクル、Low-E複層ガラス、二重スラブ設計など、省エネルギー、エコロジー、防音の効果を確保している。2万本を超える植栽も計画しており、大気中のCO2削減に役立てる。
複雑な構造の設計と施工には、台湾のランドマークとなった「台北101」(建設当時、世界一の高さ)の建設に携わった熊谷組や華熊営造などのチームの経験が十分に生かされた。また鉄骨の建て方には、熊谷組が開発した「ワイヤーレス建方工法エースアップ」を採用。柱にストレスを与えずに躯体施工を可能にした。
発注者である現地デベロッパー「中華工程」を傘下に持つ大手企業集団「威京總部集団」の沈慶京主席は、台北市でインタビューに応じ「陶朱隠園は、地球環境に優しいということをコンセプトに設計した。すべての設計者にそれを理解してもらい、今後の設計に生かしてほしい」と述べるとともに「子どもたちに対して、木を植えることによってCO2問題の解決になることを教えたいという教育的な意味もある」とし、地球環境に配慮したものであることを繰り返し強調した。
施工について「難易度が高いと分かっていた。今回、日本の会社と一緒に施工することによって、自分の会社もレベルアップを図りたい」と述べたほか「この先も歴史に残る建物になってほしいと考えている。熊谷組には感謝している」と話した。
さらに、熊谷組との関係について「機会があれば、今後も協力し合って、いろいろな場所で建物をつくっていきたい」と語った。
残り50%掲載日: 2018年8月24日 | presented by 建設通信新聞