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  • プロジェクト・アイ/中部横断道・樽峠トンネル南工事(静岡市)/施工は清水建設

    ◇PCa版で避難坑覆工/1ピース20分の施工スピード

     

     静岡県と山梨県を結ぶ「中部横断自動車道樽峠トンネル南工事」(静岡市)が、19年1月の完成に向けて大詰めを迎えている。施工を担当するのは清水建設。避難坑の一部はプレキャストコンクリート版(PCa版)を使ったライニング工法「PCL工法」を採用して覆工しており、PCa版1ピース当たり20分程度という速さで作業が進む。約500メートルに及ぶ長い距離の新設をPCaで覆工するケースは珍しく、施工スピードに注目が集まっている。(編集部・熊谷侑子)

     

     中部横断自動車道は新東名高速・新清水ジャンクション(JCT、静岡市)を起点に、山梨県を経由して上信越道佐久小諸JCT(長野県小諸市)に至る全長130キロの高速道路。このうち新清水JCT~増穂インターチェンジ間では中日本高速道路会社による有料道路方式(30キロ)と国土交通省による新直轄方式(28キロ)の併用による工事が進行中だ。

     

     開通後の効果として静岡・山梨両県の物流や人的交流の活発化などが期待されている。さらに防災道路としての機能強化も見込まれる地域の一大プロジェクトだ。

     

     今回訪れた樽峠トンネル南工事は工事中区間の一部。通常、将来的に拡幅する可能性を見越して避難坑を覆工することは少ない。しかし同工事の場合、避難坑掘削時に出現した泥岩が将来的に劣化して崩れ落ちることが懸念されるため、避難坑の一部に覆工コンクリートの施工を決めた。

     

     同トンネルは本坑(2627メートル)と並行する避難坑(同)などで構成する。このうち避難坑の8カ所、延長にして約500メートルで覆工コンクリートの施工が必要とされたが、従来の覆工方法である現場打ちで施工するには課題が山積していた。

     

     現場打ちによる覆工で作業を進めた場合だと工期に間に合わない可能性があることに加え、覆工コンクリートを打設する特殊な技術を持った職人の確保が困難だったためだ。工期と人員、この二つの課題を解決する手段としてPCaによる覆工が採用された。

     

     工事で採用しているPCa版は半円をさらに半分にした扇形の形状で、幅1.5メートル、重さ3トン。今回の工事では約650枚のPCa版を使って覆工している。覆工に当たり、PCaはスピード、コスト、品質の3点でその魅力を発揮した。

     

     とりわけPCaを使うことで得られた最大のメリットは施工スピードの速さ。PCa版は1ピース当たり20分という速さで設置が完了する。

     

     覆工手順はこうだ。トラックに積まれたPCa版を覆工専用架設機械に固定し、壁面に沿うようにあてがっているところに昇降機に乗った作業員が手作業で天頂部通しボルトを設置。微妙な高さを調整した後に支持金具を使って固定する。この作業を繰り返すことで1日当たり6.4メートルの覆工が可能。同社の試算によると、現場打ちで覆工した場合の1日当たり3.7メートルと比較して工程を41%短縮できる。

     

     現場打ちではトンネル用の型枠のセントルを常時設置する必要があるため、坑内は狭くなりがちだ。一方でPCaの場合、施工に使用する大型の機械はPCa版を架設する専用機械と昇降機のみ。いずれも架設後は退避するため、広い作業スペースを確保して安全に施工を進めることができる。

     

     同じ箇所を施工する場合、PCaは現場打ちよりも材料に必要なコストが上回る。しかし打設用の人員が不要となり、工期も短縮できるため、トータルコストでは現場打ちよりも下回る。さらに、コンクリートの仕上がりは現場打ちした場合と比較して緻密なため、供用後もライフサイクルコストを低減できるメリットもある。

     

     高い品質を確保できる点も魅力の一つ。現場を統括する清水建設の出浦博之現場代理人にとってPCaを使った覆工は今回の工事が初めてとなるが、「現場打ちコンクリートの場合、天候や気温などに品質が左右されやすいのに対し、工場生産のPCa版は品質が均一化しており、安心感を持って施工できる」と品質の高さを実感する。

     

     工事の進捗(しんちょく)率は8月末時点で97%。静岡県と山梨県をつなぐトンネルということもあり、地元の関心も高い。毎月3~4組の見学希望があるという。地域の期待を受けながら工事は順調に進行中だ。出浦現場代理人は「残りの工期は短いが、最後まで無事故無災害で良いものに仕上げたい」と完成に向けた意気込みを語る。

     

     《工事概要》

     

     △工事場所=静岡市清水区

     

     △規模=総延長2627m、トンネル掘削工本坑2627m、掘削工避難坑2621m、ずり盛り土30万㎥

     

     △工期=2011年6月4日~19年1月31日

     

     △発注者=中日本高速道路会社

     

     △施工=清水建設

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    掲載日: 2018年9月11日 | presented by 日刊建設工業新聞

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