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  • 深刻危機 反転攻勢の契機/社保加入へ捨て身の訴え/人口減+高齢化 適正工期

     2008年9月15日の米国証券会社リーマン・ブラザーズの破綻を象徴とする、いわゆるリーマン・ショック(金融危機)から10年。基軸通貨ドルへの信用不安が世界の経済を落ち込ませ、日本の建設産業にも各種設備投資の凍結・中止を招き、資金繰りの面でも影響を及ぼした。当時、民間投資は減少を続ける公共投資を補う形で建設投資全体額を支えていたが、金融危機によって民間建設市場は1年間で一気に6.5兆円分の市場が縮んだ。しかし建設産業界はいま、金融危機後の最悪の環境から脱した。転機となったキーワードをもとに、10年の軌跡と今後を展望する。

     

     07年の米国住宅バブル崩壊をきっかけにした米国発の金融危機は、日本国内の設備投資意欲を一気に冷え込ませ、公共投資減少を補う形だった民間建設市場の大幅減につながった。額にして、08年度の民間建設投資額31.5兆円に対し、09年度は25兆円、10年度は23.9兆円まで縮小。1年間で6.5兆円、2年間で7.6兆円分の市場が消滅した。

     

     その結果、大手・準大手、中堅建設業だけでなく地元建設業にまで深刻な影響を与えた。民間発注者が金融危機の影響度合いを図りかねて、建設途中の案件を中止ではなく凍結にするケースが相次いだからだ。建設業にとって施工途中の中止なら人や資機材を完全撤退できるが、凍結では再開に備える必要があるため、投資額の落ち込み以上に難しい局面に立たされた。

     

     民間需要(民需)の急激な縮小は、01年に発足した小泉政権で決定的となった公共事業費削減と、改正独禁法施行や脱談合宣言などによって顕在化した過酷なダンピング(過度な安値受注)の問題をより深刻なものにさせた。

     

     金融危機の当時、既に公共工事で始まっていた低価格競争は大規模工事から中小規模工事まで拡大、これが発注者の品質確保懸念につながり、国土交通省は事実上の失格基準となる特別重点調査を導入した。

     

     これに対し下請けは企業存続のために、▽ダンピング▽職人解雇▽社会保険加入の取り止め--に踏み切る。下請けのダンピングは、「ワンコイン職人(1㎡当たり単価500円)」と揶揄(やゆ)されるアルバイト並みの低賃金に甘んじる環境を自らがつくった。

     

     この負の連鎖を断ち切るきっかけは、元請けに対し立場は弱く、職人を解雇しながら安い単価で受注することで苦境をくぐり抜けた下請け・団体による、行政・元請団体に対する捨て身の反転攻勢だった。その代表例が社会保険加入促進であり、見積書の法定福利費別枠計上の実現だった。窮地に追い込まれた地方建設業者と専門工事業者が、公共投資確保だけでなく、公共工事設計労務単価の引き上げの実現を本気で訴え始めたのもこの時期だ。

     

     こうした専門工事業団体からの強まる発言力は、ものづくり産業を支える人づくりとして基幹技能者の評価を掲げた国交省の『建設産業政策2007』を受け、専門工事業界が強調した「本来は元請けの役割である業務の一部もいまは担っている。生産システムは技能者が担っている」という自負と主張が、国交省の理解を得たことが背景となった。

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    掲載日: 2018年9月18日 | presented by 建設通信新聞

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