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リーマン・ショックから10年・デフレ脱却へ公共投資拡大/失敗繰り返さない自覚を共有
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>建設市場規模そのものの好転を決定づけたのは、東日本大震災後の2012年12月に発足した第2次安倍政権の経済政策だ。デフレ脱却のためのけん引役として公共投資を拡大、20年東京五輪誘致決定や経済成長戦略もあって国内民間投資も回復、リーマン・ショックの影響で官民合わせた建設市場が最も冷え込んだ10年度の41.9兆円から17年度は55兆円と7年間で13.1兆円増加した。
この55兆円は、過去の55兆円市場とはまったく違う構図で構成されているのが最大の特徴だ。22.3兆円の17年度政府建設投資は、6年連続の設計労務単価引き上げや働き方改革、生産性向上などさまざまな企業の取り組み支援を経費として計上した結果だ。
一方、17年度建設投資の約6割を占める32.7兆円の民間投資も過去同規模の状況とは違う。最も違う点は建築着工床面積で、民間投資が32.6兆円だった1993年度の非居住床面積は6755万3000㎡、これに対し17年度は4729万3000㎡にとどまっている。17年度の水準はリーマン・ショック前の5000万-6000万㎡までは回復していない数字だが、過去最高益を更新する大手や準大手などを筆頭に、中小、小規模企業まで収益回復傾向は鮮明になっている。建設市場の過半を占める民間の主力である非居住建築着工床面積が金融危機以前の水準まで戻らない中で、収益回復が鮮明になっていることは、建設業界が価格・工期のダンピングから脱して、通常の産業・企業活動に戻りつつあることを物語っている。
だからこそ今後は、自らを窮地に追い込む価格や工期の「ダンピング」が元請け、下請けから完全になくなり好循環がいつまで続くかに関心が集まる。
いま浮上している1つの回答は、「人口減+高齢化問題によって安全対策強化や働き方改革に拍車がかかることで、当面は需要に供給力が追いつかない現状が続く」というものだ。裏読みすると「人手不足が収益回復を下支えしている」との皮肉な見方もある。
さらに、建設業界が経験したこの10年について、元請けと下請けは「過去の苦い経験、失敗を繰り返してはならない」という思いも共有する。現場の安全、生産性向上は、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)ですべて解決するわけではなく、施工管理の技術者と職長・職人の技能者の存在が元請けの供給力のバロメーターであることを、元請けと下請けがはっきり自覚したことも10年の成果かもしれない。
残り50%掲載日: 2018年9月18日 | presented by 建設通信新聞