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スコープ/建コン協、長時間労働解消に議論集中/整備局との意見交換終了
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>◇業務納期の分散徹底を
建設コンサルタンツ協会(建コン協、村田和夫会長)と国土交通省の各地方整備局など公共発注機関との18年度地方ブロック意見交換会が、豪雨災害の影響で延期となった四国、中国両整備局を除く全国7ブロックで終了した。来年4月施行の働き方改革関連法で残業時間上限規制の順守が求められる建コン協側は「業務発注の平準化は待ったなし」と強く訴えた。長時間労働解消へ交わされた議論を振り返る。(編集部・富本伸一)
「(発注者との)危機意識の共有化は図れた」。19日に東京都内の建コン協本部で開いた記者会見で、村田会長は7月10日~9月10日に行われた意見交換会の手応えをそう語った。
本年度の会合で建コン協が強く訴えたのは、長時間労働の解消に向けた納期の平準化、発注者が金曜日に業務指示などを行わない「ウイークリースタンス」の全国一斉適用、国交省が公表した業務契約ごとの標準履行期間の運用の徹底だ。
ここ数年繰り返し要望してきた各種施策の実行だが、来年4月の働き方改革関連法施行でサービス業に該当する建設コンサルタントは超過勤務の上限規制時間を超えると罰則が科されることもあり、意見交換での訴えも一段と熱を帯びた。
建コン協が売上高100億円超の会員企業16社に残業時間の実態を調査した結果、納期が集中する3月は1人当たりの平均が92時間。野崎秀則理事は「改正労働基準法の残業時間上限規制で定める原則45時間を大幅に上回っている」と指摘し、このままでは6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられるようになるとの懸念から、各整備局に各種施策の早期対応を迫った。
改善要望に対し、7月10日の会合で塚原浩一前中部整備局長(現水管理・国土保全局長)は「事務所を含め相当の危機感を持って取り組まなければいけない」、8月30日の会合で黒川純一良近畿整備局長は「建設コンサルタント関係は長時間労働の是正を加速させる必要がある」と同調。7月24日の会合で和泉晶裕前北海道開発局長(現北海道局長)は「3月末納期の前倒しや業務の繰り越しに本年度から取り組み始めた」、8月7日の会合で藤巻浩之九州整備局企画部長は「繰り越しに対する抵抗感をなくし、不要な資料は作らせることをやめさせる」と強調した。
国が示した納期の平準化の実施目標(4~12月25%以上、1~2月25%以上、3月50%以下)の実現に向けて、東北整備局は「本年度から新たに事務所目標を設定した」、九州整備局は「当初から国債(国庫債務負担行為)を設定し、2カ年の業務とするよう出先事務所を指導している」、北陸整備局は「国債などを活用した履行期間の設定イメージ(図式化)を事務所に波及させる」と明かし、各整備局が国債、翌債や繰り越し制度の適切な運用、来期案件の発注手続きの前倒しによる発注時期の分散化に前向きに取り組む姿勢を鮮明にした。自治体側でも、北海道と札幌市、青森県、福島県などがゼロ債や翌債を活用した納期の分散化を実施するなど、検討する動きを加速すると応じたところが目立った。
納期の平準化で協会が求める目標は第4四半期が50%以下、3月が30%以下。野崎理事は「納期を(3月から)前倒しする案件も増えているが、設計変更などが生じて結局は全体の7割超が3月に設定されている」として改善を訴えた。年度末納期の分散化の徹底に加え、次年度の業務発注分の技術提案書作成時期が重複しないよう公示・提案時期の11~12月への分散化、発注時の特記仕様書にワーク・ライフ・バランス(WLB=仕事と家庭の調和)の実行を明記することも求めた。
ウイークリースタンスの一斉適用も俎上(そじょう)に上り、野崎理事は「発注者側の突発的な作業依頼により、深夜残業、休日出勤、待機指示などが発生している」と指摘。調査した856業務のうち108業務で待機指示、深夜残業・休日出勤が生じており、ウイークリースタンスの全業務への適用と自治体への展開を求めた。
石原康弘関東整備局長は9月10日の会合で「フライデー・ノーリクエスト、マンデー・ノーピリオド」や「ウエンズデー・ホーム」の徹底を重視するとした上で、「業務環境改善を狙いに働き方改革モデル業務を新たに試行する」、吉岡幹夫北陸整備局長は同6日の会合でウイークリースタンスを「本年度からすべての測量、地質調査、建設コンサルタント業務で実施する」と相次ぎ表明。中部整備局も本年度から測量、地質調査を含むすべてのコンサル業務に適用を拡大した。自治体側でも「職員の働き方改革にも通じる」との声が上がり、首都圏などの自治体がウイークリースタンスの導入・拡大、検討などを進めるとした。
関東地区の会合で「働き方改革はこの1年が正念場。完全週休2日・深夜残業ゼロの実現には受発注者が一体となった取り組みが不可欠」と訴えた村田会長に対して、石原局長は「(建設コンサルタント業界は)発注者と一心同体だ」と即答した。
働き方改革を成し遂げ、魅力ある業界を作るために3月に集中する納期の分散と日常の業務慣行の改善を求める建設コンサルタント業界の訴えにどう応えるのか。行政側の実行力が問われている。
残り50%掲載日: 2018年9月27日 | presented by 日刊建設工業新聞