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  • 技術裏表・帝人の高機能繊維補強木材「AFRW」

    【炭素繊維で集成材の剛性向上/軽さ損なわず自由度高める】

     

     「元々の木の軽さを損なわずに弱点であるたわみを抑え、設計の自由度を上げることができる」。帝人が開発した高機能繊維補強木材「AFRW(Advanced Fiber Reinforced Wood)」について尾崎大介アラミド事業本部ソリューション開発部長はこう語る。AFRWは木のぬくもりや軽さなど木材の利点を生かしつつ、建築物の耐久性や意匠性の向上に大きく貢献する。10月にはAFRWを使った初の建築物も着工する。 AFRWは、補強材として高機能繊維強化複合材料を貼り付けた集成材。炭素繊維を補強材として組み合わせた場合、その硬さを生かして木のたわみを抑えることができる。剛性は通常の集成材の2-3倍まで高められ、3倍の場合は厚さを約3分の2程度まで薄くできる。梁として使用すると集成材の軽さを維持しつつ耐久性向上に加え、大スパン空間の実現など意匠性の向上にもつながる。

     

     同社がAFRWの開発に着手したのは2014年。当時の中期経営計画で「環境・省エネ」「安心・安全・防災」「少子高齢化・健康志向」を軸に同社の技術を生かした「ソリューション提供型事業体への進化」をコンセプトに掲げ、建築物への木材活用を促進するソリューションとして強みの繊維を組み合わせた集成材の開発を始めた。開発着手時は同社の松山事業所を始め、林業が活発な四国を中心にまずは「集成材メーカーや木材の専門家など外部と協力関係を結び、チームづくりから始めた」(尾崎部長)。

     

     木材を炭素繊維で補強するというアイデアは、00年代に東邦テナックス(18年に吸収合併)で検討を進めていたこともあり、補強効果に関する基本的なデータやノウハウは蓄積されていたが、「何をつくったら意義があるのか」(尾崎部長)をマーケティングしながら慎重に検討した。その結果、「AFRWがあるからこそ建設できる建物」(尾崎部長)をイメージし、中低層の建物への適用に向けて開発を進めた。

     

     15年の開発完了後、17年には愛媛県で開かれた国民体育大会のメイン会場内の「おもてなし北側ゲート」に12mの梁材として採用された。18年にはレジリエンスジャパン推進協議会が主催する「ジャパン・レジリエンス・アワード」で木造建築の発展や林業再興などの可能性が評価され、ものづくり分野の最優秀賞も受賞した。

     

     10月には前田建設との共同プロジェクトでAFRWを構造材として実用化する世界初の建築物が着工する。帝人東京研究センター敷地内に事務所として建設され、AFRWの剛性を生かした5mのオーバーハングが最大の特徴だ。さらに木のぬくもりを確保しつつ柱の本数を抑えた開放的な空間を実現する。

     

     5月に第三者評定機関による建築物の性能評価、7月に国土交通大臣の認定を取得済みで、18年度内の完成を予定している。

     

     今回のプロジェクトを足がかりに、同社では20年ごろまでに一般建築物への実用化に加え、建築材料としての認定も見据えている。尾崎部長は「AFRWの活用が広がらないとソリューションとして多くの人に届かないため、まずは広げることに注力したい」と意気込む。

     

     今後、実績を積み重ねることで炭素繊維を組み合わせたAFRWの普及を目指す。その後にニーズが見込まれる場合は、炭素繊維よりしなやかなアラミド繊維で、木材に靱性を加えたAFRWや炭素繊維とアラミド繊維の複合などそのほかの高機能繊維と組み合わせたAFRWも検討する。

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    掲載日: 2018年10月3日 | presented by 建設通信新聞

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