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建設論評・人手不足は生産性向上の好機
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>何をいまさら人手不足かと言われるに相違ない。それ程に人が足りない。人が足りないとどこの産業でも、どこの生産現場でも言っている。あるいは言い続けている。そう言い続けて人手不足が解消したのかといえば解消していない。殊に建設業では労働力の払底していることを武器として発注者との価格交渉に使っていると見る向きもある。もしそうであれば、人手不足の時期は単価が上がり利益が増えてめでたしめでたしとなったとしても、逆の時代が来れば、買いたたかれて再び塗炭の苦しみを味わうことになる。
では、建設業は本当に人手不足なのかといえば確かに足りない。その足りない影響は末端の技能労働者において顕著である。型枠工、左官、とび工、鉄筋工などにあって、小企業、零細企業では人手不足のあまり、社長自らが「足袋を履いて」現場に出るなどしている。大手ゼネコンなどは、欲しい人材は必ずしも十分ではないが、数においてはほぼ確保しているようである。
人手不足の時ほど建設業は利益が出るとすれば、この貴重な時間を有益に使って、次の時代に備えるのが当然である。目の前の人手不足にのみ目がいってしまい、何とか人を確保する、すなわち人を集める、増やすことばかりに労力を使っていては将来が危うい。何をするかは建設各社の力量次第だが、少なくとも現在の環境から学んでほしいのは1人当たりの生産性を向上させることである。
大きな統計でいうと産業別生産額で建設業の割合は5.5%であるのに対し、産業別就業者数では建設業の割合は7.7%である(内閣府『国民経済計算』および総務省『労働力調査』)。すなわち建設業は全体の7.7%の就業者を使って5.5%の生産を上げているという低生産性の産業なのである。これを他産業並みの生産性にするためには就業者数を5.5%に落とし、いまと同様の5.5%の生産を上げるというのが理屈である。そのためには、何と約4割の生産性向上が必要なのである。そんなことができるかという前に建設業の1人当たり賃金や総労働時間を見てみれば、いかに建設業の就業者に無理をかけているか明白ではないか。
さすがに規模の大きなゼネコンにあっては相当な研究開発費を使って効率の良い、安全な工法の開発に当たっている。しかし、全産業が平均して売上高の3.5%を研究費に投じているのに対し、建設業はいまだ0.4%に過ぎない。まだまだ研究の余地があるのに利益が出ないから研究費が少なかったとすれば、いまこそ研究費を惜しまず支出すべき時期ではないか。一部の大企業の研究費が100億円と聞けば大金だが、1兆円を超える売り上げからすればやっと1%である。
建設業は特殊だから、施工場所が変わるから、一品生産だからというのはもうやめようではないか。いまや好況の最中なのだ、いまやれないことがこの先できるようになるだろうか。
いま自分がやらずしていつ誰がやるのか。 (三)
残り50%掲載日: 2018年10月5日 | presented by 建設通信新聞