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KYB問題/大手・準大手に広がる苦悩/来期以降の業績下押し懸念/業界の長期的な経営課題に
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>KYBとその子会社のカヤバマシナリーが建築基準法に基づく国土交通大臣認定などに適合しない免震・制振ダンパーを出荷していた問題で、大手・準大手ゼネコン各社が影響度合いを測りかねて頭を悩ませている。各社とも多くの手持ち工事を抱える中で工程遅れへの対応が問われる上、状況次第では来期(2020年3月期)以降も含めた業績下押しリスクになりかねない。 今回の問題で国土交通省は、KYBに対し所有者への状況説明と、交換方法・体制・スケジュールを含めた具体的な方針を所有者に示し、年内をめどに対象建築物の設計者などと協力して構造安全性を検証して第3者機関の確認を受けるよう求めた。大手・準大手ゼネコン各社は、保有している物件リストとKYBが示すリストの突き合わせや、事業者との対策の検討を順次始めている。
既に竣工している物件については、説明や安全性の検証、対策の検討などを「時間をかけて進めるしかない」(大手ゼネコン)という状況だ。特に、顧客の要求水準を満たすように数値を改ざんしていた制振ダンパーについては、「超高層ビルの壁の中にあるダンパーの取り換え方法を検討することは可能だが、かなり手間と時間がかかるので、事業主に理解されるか」(準大手ゼネコン)という課題も突きつけられている。既存マンションでは、マンションの資産価値に直結するため、「違反品でないダンパーも含めてすべてを交換してもらうべき」と主張する管理組合も出てきており、交換作業への対応も長引くとみられる。
ただ、大手・準大手ゼネコンにとって「もっと大変なのは、既にダンパーを取り付けた施工中の物件だ」(大手ゼネコン)という。竣工間際や竣工検査直前の物件では、安全性などを確認した上で特定行政庁による「仮使用認定」が認められており、工程を前に進めることはできるものの、一定の工程遅延は一部で発生し始めている。ただでさえ各社とも多くの手持ち工事を抱え、相次ぐ台風などで工程が遅延ぎみだった上、KYB問題で対象製品の確認や安全性の調査などによる工程遅延が重なり、「納期に間に合わせられるか」「協力会社へのしわ寄せが起きかねず、人の手当てなどが難しい」と、個別案件の対応に追われている。
マンションについては、既に複数の大手デベロッパーが販売を中止しており、デベロッパー、ゼネコンともに施工中物件の今期中の売上計上ができなくなる可能性も否定できず、遅延による収益圧迫リスクも積み重なっていく。ただ、いずれも個別物件によって状況が異なるため、「(今期の)一定の業績への影響は考えられるが、その程度が測れない」(大手ゼネコン)という。
さらに大きな問題は、準大手ゼネコン幹部が「今後も、代替製品がない限り、使い続けたいと思っていたのに」と語るほど、KYBの免震・制振ダンパーの性能が高く評価され、高い市場シェアを誇ってきた点だ。仮に、同社の製品が今後の新規ビルで使用できないと判断された場合、「今後の免震ビルの新規物件がすべて止まるという衝撃はかなり大きい。来期以降の売上見込みが立てられなくなる」(準大手ゼネコン)という可能性すら浮上し、「RC造の受注でカバーするなんて可能だろうか」(同)と頭を抱える。
個別製品の性能や物件ごとの方針が定まらない中で、施工中の物件の対応はもとより、来期以降の業績への影響など、建設業界における長期的な経営課題として尾を引くことになりそうだ。
残り50%掲載日: 2018年10月31日 | presented by 建設通信新聞