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  • プロジェクト・アイ/東名・大和トンネル拡幅工事(神奈川県大和市)/施工は西松建設

     国内有数の渋滞箇所とされる東名高速道路の大和トンネル(神奈川県大和市)付近で中日本高速道路会社が車線を付加する拡幅工事を進めている。「東名高速道路大和トンネル拡幅工事」は、上下線に付加車線を設けて交通容量を確保し、渋滞の解消を図るのが目的だ。施工を西松建設が担当。車両通行が絶えない状態の中でも交通に影響を与えないよう、細心の注意を払っての作業が続いている。(編集部・熊谷侑子)

     

     東名高速道路は東京インターチェンジ(IC、東京都世田谷区)から神奈川県・静岡県を経由し、小牧IC(愛知県小牧市)へ至る約346キロの高速道路。このうち横浜町田~海老名ジャンクション(JCT)間は交通量が非常に多く、1日当たりの平均交通量は13万台に上る。

     

     特に渋滞が慢性化している大和トンネル付近では、交通事故も少なくない。同区間での渋滞対策は喫緊の課題とされる。同工事では延長280メートルの大和トンネルの上下線それぞれに幅3・0メートルの付加車線を設け、片側車線を17・5メートルに拡幅。トンネル内とトンネル付近の道路に余裕をもたせることで、渋滞による事故の発生を抑制しようという計画だ。

     

     箱型の同トンネルを拡幅する作業手順は、まず拡幅スペースを確保するため、両側の森の木を伐採し、地面を掘削。新たなトンネル拡幅部を支える地盤を改良した後、コンクリート約1万4000立方メートルを打設して新たな壁を構築する。

     

     一方トンネル内では既存車線の切削オーバーレイを行った後、構築から50年が経過し劣化が進んだ上下線を分離する既存柱を補修。続いて走行する車両のそばで安全に作業するための防護柵を設置し、既存の側壁を細かく切り崩して撤去する。19年7月の構造物の完成に向けて作業は後半に入っており、9月から既存側壁の撤去に着手した。

     

     民家と近接する現場を統括する西松建設の谷川潤所長は「民家とトンネルを走行する車両の双方に配慮した施工が重要だ」と工事の難しさを指摘する。工事の難易度をさらに上げているのが1日13万台という交通量の多さだ。谷川所長によると「これだけの交通量があるトンネルで、片側3車線の走行を確保したまま拡幅する工事は過去にもあまり例がない」という。

     

     施工に当たっては車線付近で作業する作業員の安全対策と、作業が車両の走行を妨げないようにするための対策の両方が求められている。

     

     作業員の安全対策では、側壁寄りの車線と側壁の間に防護柵の中でも最も強度の高いものを設置し、作業員の安全を確保した。時速120キロで走行する車が柵に対して30度の角度でぶつかっても柵の内部の安全が保たれる強度設計となっている。防護柵には、工事中にトンネル全体の天井を持ち上げている仮受け支柱を守る役割もある。

     

     走行する車両への対策では既存側壁の解体方法を工夫した。通常、ワイヤソーを使ったコンクリート構造物の解体では、ワイヤの滑りを良くし、さらに摩耗を防ぐ目的で刃に水をかけながら切断する。しかし今回の工事で水を使用すると、トンネルを走行する車にセメント分が混じった切削水がかかってしまう懸念があった。

     

     そこで今回の解体では水を使わず、ワイヤソーでコンクリートを切断すると同時に吸引装置を使って切断に伴う粉じんを回収。粉じんなどでトンネル内の視界が悪くなったり、車体が汚れたりすることを防ぐ方法を採用した。切り出した側壁は1ピース当たり約4トンの重さ。クレーンを使って慎重に運び出す作業が続く。1日4ピースずつ、約4カ月かけて解体を完了させる予定だ。

     

     多くの制約条件が常に現場を悩ませる。だが難易度の高い施工は、若手社員の能力を伸ばす絶好の機会にもなる。現場に従事する20代の若手社員も、この現場から何かを学び取ろうと日々奮闘している。

     

     「さまざまな作業が同時に進む現場なので、複数の専門業者同士の打ち合わせを調整し、作業をスムーズに進めるすべを身に付けたい」と話すのは入社3年目の大内猛幹さん。現場はさまざまな工種があるため「日々変化する現場に追いつくのが大変」と漏らす。苦労の一方で「大和トンネルという有名な現場で仕事をしているという誇りもある。配属されたことを光栄に思いながら、最後まで無事故で頑張りたい」と決意を話す。

     

     9月時点の進捗(しんちょく)率は55%。側壁を撤去した後は既存の柱の2次補修、車線のシフトなどの作業が続く。1日13万台もの車が走り去るトンネルで、本線の交通に一切の影響を与えることなく安全に施工を進めてきた。

     

     谷川所長は「引き続きドライバーや近隣に迷惑を掛けないよう配慮しながら、安全第一で完成を迎えたい」と意気込みを語る。

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    掲載日: 2018年11月1日 | presented by 日刊建設工業新聞

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