当サイトについて 採用ご担当者様
会員登録はこちら 求人検索

建設技術者向けNEWS

建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!

  • 現場探訪/高槻市役所本館耐震改修(大阪府)/設計・施工は飛島建設JV

    ◇トグル制震ブレースで地震力に対応

     

     大阪府高槻市で市役所庁舎の耐震性を高めるための「高槻市役所本館耐震改修事業」が進む。市が設計・施工一括(DB)方式で発注したプロジェクトは、飛島建設・住光建設・山下設計JVが施工する。耐震性を向上させる技術として「トグル制震ブレース」を採用し、防災拠点としての機能確保を目指している。綿密な施工計画を立て、市役所機能を維持する平日の「居ながら工事」と、業務のない土日と祝日の施工を組み合わせ工事が進んでいる。

     

     建設地は桃園町2の1(敷地面積1万7703平方メートル)。1970年に完成した本館はSRC造地下2階地上7階建て延べ1万9409平方メートルの規模。地上1階に市民向けサービスを行う市民課などがあり、2階には議会事務局などを配置し、3階以上が各部門の一般執務スペースになっている。

     

     工事内容は、新設制震ブレース補強(トグル制震ブレース=101構面、202基)をはじめ、▽新設鉄骨ブレース補強(4構面)▽RC耐震壁増打・新設(31構面)▽垂直完全スリット(延べ337・7メートル)▽水平完全スリット(延べ441・4メートル)▽炭素繊維シートを使う柱SR-CF補強(94カ所)▽ポリエステル繊維補強材を使用する柱SRF補強(9カ所)-などを計画。17年10月1日に着手した工事の進捗(しんちょく)率は、10月末時点で33・9%となっている。

     

     騒音や振動、粉じんの発生を伴う作業は土日と祝日に限定され、外部のはつり作業を行えるのも土曜日だけ。このため火曜日を現場閉所としている。

     

     平日の作業範囲は室内に設けた仮間仕切りの内側だけに限られる。執務空間の片側に机などを寄せて作業空間を生み出す。外部足場と各階のステージを使い、窓や扉が開閉できる場所で資機材の搬入と廃材搬出を行う。

     

     建物全体を作業エリアにできるのは土日・祝日と夜間。限られた時間で作業を行うため施工に携わる関係者は多くなる。安全確保やスムーズな施工の実現に向け、現場の入出場管理は厳格に行っている。土日に作業する場合、金曜日の午後6時から作業スペースの床面をブルーシートで養生し、日曜日にはシートを撤去した上で、クリーニングしてから撤収している。

     

     平日と休日では施工できるエリアが異なるため、本館内を46工区に分割した施工計画を立案。1工区当たり約4カ月で仕上げていく。議場がある2階は1年に5回、市議会本会議が開かれるため、本会議ごとに約1カ月は作業を中断。結果的に2階は1工区当たり6カ月の時間が必要になる。1階は平日に市民が利用するため作業を休日に限定。天井改修も行うため、執務スペースに足場を組んで作業している。

     

     トグル制震ブレースは柱に炭素繊維シートを巻くSR-CF補強や梁のコンクリートはつり作業が完了した壁面から順次設置していく。ブレースはチェーンブロックを使い慎重に備え付ける。10月31日時点で全202基のうち内部18基、外部28基の設置を終えている。

     

     作業が集中する土日・祝日の効率的な施工を実現するには「金曜日までの平日の準備がカギになる。作業手順をよく考えて計画を立てる必要がある」と飛島建設JVの赤松旭所長。毎週木曜日には市の担当者と各階の施工計画を打ち合わせ、週末を迎えることを繰り返してきた。

     

     現場はJR西日本高槻駅や阪急電鉄高槻市駅から徒歩約10分圏内の市中心部にあり、国道171号にも接している。このため人通りだけでなく車両の通行量も多い。「第三者への配慮が必要な環境」で、誘導員を要所に配置するとともに、施工区域と市民利用区域を明確に分離することで、第三者を巻き込む災害の防止に努めている。

     

     6月18日には大阪北部地震が発生し、高槻市も震度6弱の揺れが観測された。市庁舎の躯体に影響はなかったが、市役所に災害対策本部が設置されたため、その間は振動や騒音を伴う作業を中断した。工期は厳しくなったものの、施工計画を見直し「無事故・無災害で19年12月27日の完成を迎えられるよう作業を急いでいる」(赤松所長)という。

    残り50%
    ログインして続きを読む 会員でない方はこちらよりご登録ください

    掲載日: 2018年11月21日 | presented by 日刊建設工業新聞

前の記事記事一覧次の記事