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建設産業・新時代の視座No.1
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【交錯する糸(1)/昭和、平成、その先へ/トップに広がる「健全な危機感」/これまでの垣根 次々と消失】
「平成31年」がスタートした。5月には改元が予定され、新元号のもとで新たな時代が幕を開ける年でもある。戦後復興から高度成長期、さらには成熟期の入口までを担った「昭和」、建設産業界がいくつかの劇的転機に直面した「平成」を経て、新たな時代が始まろうとしている。しかし過去の昭和から平成に至るプロセスと今回は趣がだいぶ違う。新時代の建設産業を複眼的に展望する。 2020年東京五輪後、五輪関連需要の反動減で建設市場が縮少することの問題を示す「ポスト五輪」懸念はほぼ払拭された。首都圏については五輪後しばらくは大規模再開発を中心に今後も継続的・持続的な投資が行われる手応えは十分感じている。目先、2019年3月期決算は、減収でも利益額は一定程度確保できる見通しはある。建設業界の環境好転と先行きの明るさを示す受注残高(未消化工事高)は今後、もう一段積み増しする企業も多い。最大の懸念材料は、免震・制振ダンパーの不正問題と、高力ボルト、角形鋼管(コラム)の品薄だ。
こうした状況を踏まえ、業界環境を概括的に分析すれば「建設業界は懸念材料はあっても足元と先行きの需要は当面、旺盛に推移するとの判断が大勢を占めている」となる。その結果、目先と中期の市場環境について各建設企業トップも明るさを隠さない。ただしその明るさも一皮むけば例えようのない一抹の不安が隠れている。
ある建設企業トップはこの状況と心理を『健全な危機感』と表現する。このトップは、建設企業に突きつけられている生産性向上や働き方改革の本質を「仕組みの改革であり、働く人の意識改革。だからこれまでと同じような仕事をしていてはダメだ。もしかしたらこれまでの仕事を否定することになるかもしれないが、変わらなければ成長しない」とみているからだ。
当面の市場環境に明るさがある中、表現は異なるものの、『健全な危機感』をなぜ多くの建設企業トップが抱えているのか。ひも解くかぎは『カテゴリーの崩壊』、言い換えると『垣根の消失』だ。
建材メーカーはすみ分けられた枠組みを超え集約・統合し、規模のメリットを追求し始めたほか、ハウスメーカーも戸建て住宅中心から業容を拡大し、ゼネコンを傘下にしながらデベロッパー的役割にも進出。また、設計やコンサルタントといった建設上流分野でも、建築と土木というカテゴリーですみ分けられていた設計事務所と建設コンサルの経営統合や、サービス業の分類だった建設コンサルの再生可能エネルギー事業への投資など業容が一気に拡大している。
垣根の消失はゼネコン、設備にも及ぶ。設備投資対象の建設物の維持管理や更新を見越した事前の対応が、BIMなどの技術革新によって、設計段階から設備機器を含めた最適な設計と施工を事前に顧客と詰めるフロントローディング、コンカレントエンジニアリングの考え方が浸透しつつある。
建設投資市場の推移だけを見ると、ピーク期の約84兆円から半分の42兆円まで激減するという極端な市場の縮小を経験した平成の30年間だったと言える。しかし政治・行政・産業という縦糸と、法律・制度・組織という横糸を組み合わせると、平成の30年には別の側面が見える。次回からさまざまな切り口を織り込み、新時代の建設産業を展望していく。
*建設通信新聞では、平成から新元号に変わるのを機に、平成という時代の教訓を踏まえ、変革する建設産業界の現状と今後を展望する長期連載「建設産業 新時代の視座」を展開します。
残り50%掲載日: 2019年1月7日 | presented by 建設通信新聞