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連載・建設産業・新時代の視座No.2
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【交錯する糸(2)/小選挙区導入で地元優先鮮明/建設産業/新時代の視座/市場のすみ分け、対立解消のはずが】
平成の30年間で政治・行政・産業というキーワードと、制度・組織のキーワードが絡み合って建設産業界に最も影響を与えたのは、1994(平成6)年の「小選挙区制」導入だ。中選挙区より選挙区が狭く勝敗は明白だが、死票も多い。また、各選挙区の当選者は1人のため、その時の世情に影響されてドミノ的勝利もしくは歴史的敗北という、極端な結果になる可能性が中選挙区制と比べると格段に高まった。当選するためには、地元の支持母体拡大など地元重視をより鮮明に打ち出す“地域モンロー主義”が当然のように広がることになる。
この「小選挙区制」、建設産業界に与えた影響は当初の想像を超えるものだった。中選挙区制時代、産業別の業界団体などの支持母体が強固であればあるほど、選挙では絶大な力を誇った。支持母体の力は、政治への陳情を通じさまざまな政策へも反映されていった。
しかし、小選挙区制で選挙区が狭くなれば、選挙区が広範囲だからこそ力を発揮した特定支持母体の力は削がれ、一般住民への訴求力が最も重要になる。言い換えると、根拠ない政策が大衆受けするポピュリズム(大衆迎合)政治とも言える動きの台頭だ。公共事業悪玉論を容認し大幅削減へかじを切った小泉政権の「聖域なき構造改革」や、「政権交代」だけが一人歩きした鳩山民主党政権などが、ワンフレーズ・ポリティクス、劇場型政治の代表例と言われた。
中選挙区制時代、自民党を支持する建設業界団体は、地方選挙だけでなく国政選挙にも一定の影響を与えていた。小選挙区導入後は、地方業界は地元をより重視する傾向に変わっていく。国政に地元業界の苦境を訴えても、理解されにくくなったのが理由だ。
その結果、小選挙区導入から5年後の99(平成11)年、建設省(現国土交通省)と公正取引委員会は、行き過ぎた地元業者優先発注に歯止めをかける通達を出した。規模の小さな地元企業が元請けになって全国ゼネコンを下請けにする、いわゆる上請けが問題となった。これは、バブルがはじけ金融危機に直面する中、社会保障費の増加を公共事業費削減で賄うことで財政構造改善も図ろうという国政に対し、地方自治体は地元企業を守る姿勢を鮮明にしたことが背景にある。
まさに小選挙区制導入は、大手ゼネコンなど全国展開する企業を地域工事から排除させる役割となった一方で、業界団体と国政とのパイプを細くさせたとも言える。
当然、こうした縮小均衡傾向の公共工事市場動向を踏まえれば、大手ゼネコンが手掛ける市場と、地方ゼネコンの市場を明確にすみ分けすれば全国企業と地方中小企業との対立は解消されると判断して、「市場のすみ分け」が産業政策の柱として浮上したのも無理はなかった。
しかし、この市場すみ分けは、全国企業、地方業界いずれからも反発を受け頓挫する。
残り50%掲載日: 2019年1月8日 | presented by 建設通信新聞