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連載・建設産業・新時代の視座(3)
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【交錯する糸(3)産業政策の“すみ分け”頓挫/ダンピング解消後の新秩序目指す】
1994(平成6)年の小選挙区制導入に強い危機感を抱いた企業などが出した結論、「全国企業は自治体工事から排除」という最悪のシナリオは現実化する。その結果、恩恵を受けたはずの地方建設業界も、公共工事予算の縮小とコスト削減、表面的には分かりやすく映った一般競争入札導入など競争性拡大傾向の中で、熾烈なダンピング(過度な安値受注)競争に直面していくことになる。
こうした状況の中、独占禁止法改正に連動する形で浮上した建設産業界の大きな転機の1つ、「脱談合宣言と具体的取り組み」が2006年4月から始まると、ダンピング問題は全国各地でさらに深刻化する。これが、国交省が研究会を立ち上げ策定した『建設産業政策2007』につながった。
06年6月に発足した国交省研究会最大のテーマは、規模や特性で公共工事市場を一定程度分け合う「すみ分け」。産業政策を担当する当時の国交省幹部の頭の中にあったのは、「大手・準大手(全国ゼネコン)は一定金額以下の工事には応札しない」という、大手と地域の大手・中堅企業の“市場すみ分け”だった。それ以前から俎上(そじょう)に載せられながら、具体化しなかった“市場すみ分け”が急浮上したのはなぜか。
実はこの時、建設産業界は▽郵政解散▽財政緊縮路線▽公共工事批判▽姉歯耐震強度偽装発覚▽道路4公団民営化▽改正独禁法施行--などに直面、ダンピング問題解決の糸口も見えない四面楚歌の状況に追い込まれていた。
実際、大規模工事のダンピングが問題となる前の06年2月に政府は、一般競争入札拡大と総合評価拡充、市場機能を活用した入札ボンド導入を打ち出す。これが、同年12月の全国知事会による公共調達改革指針につながった。指針は、一般競争入札拡大と指名競争原則廃止や入札参加停止期間の2年から3年への延長など地方建設業にとって不安だけが高まる内容だった。
ダンピングが大規模工事にも拡大したことを重く見た国交省の発注行政は06年4月に「前工事(ダンピング受注)単価による後工事の積算」などを柱にした対策を、さらに12月には極端な低価格入札企業を排除する事実上の失格基準となる「特別重点調査」の導入に踏み切る。こうした側面を踏まえれば、国交省の産業行政が打ち出した“市場すみ分け”とは、発注行政によるダンピング問題解消後の建設産業の新秩序を目指したものとも言えた。
しかし大規模工事の継続工事として2、3億円規模の発注があることを理由に、金額で参入制限する市場すみ分け政策の具体化は頓挫する。
市場すみ分けが頓挫する一方で、「再編淘汰(とうた)はやむなし」の危機意識を全面に打ち出した『建設産業政策2007』から20年余。今月7日に開かれた建設業11団体 新年賀詞交換会に出席したゼネコン元役員は、後輩たちにこう苦言を呈する。「個社ごとにチャンスだと判断したらもっと挑戦してもいい。縮小均衡が続いて臆病になりすぎている」。政治、行政、法律、制度。個社を取り巻く環境は大きく変わり、“市場すみ分け”は死語になりつつある。
残り50%掲載日: 2019年1月9日 | presented by 建設通信新聞