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スコープ/改正水道法が成立/「公」の関与強化し官民連携促進、維持・修繕を義務化
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>水道事業の経営基盤を強化するための措置を盛り込んだ改正水道法が昨年の臨時国会で成立した。法律を所管する厚生労働省は、公共施設等運営権(コンセッション)方式による官民連携の推進と、維持・修繕の義務化による水道施設の老朽化対策を主な法改正内容として位置付ける。ポイントをまとめた。
水道事業を取り巻く環境は人口減少などを背景に大きな転換期を迎えている。厚労省によると、水道料金として徴収する「有収水量」は2000年(1日当たり3900万立方メートル)をピークに減少を続ける。今から半世紀後の65年にはピーク時より約4割少ない、2200立方メートルまで減るとの予測もある。16年度時点で水道普及率は97・9%に達した。水道事業の基本方針はこれまでの拡張整備を前提とした時代から、既存の水道基盤を確固たるものにすることに、方向転換が求められているという。
水道事業は原則、市町村が経営している。多くの事業者が小規模で経営基盤は脆弱(ぜいじゃく)だ。厚労省によると、水道事業に携わる職員数も約30年前と比べ約3割減少した。
水道法の改正では、自治体がコンセッション事業を行いやすくする規定を追加した。民間の資金や技術力、経営ノウハウを最大限活用し、給水サービスの向上や業務の効率化に役立ててもらうためだ。
従来の改正PFI法に基づいて水道コンセッションを行う場合、まず自治体が国に水道事業認可を返上し、民間運営権者が新たに認可取得する手続きが必要だった。改正水道法では事業の確実かつ安定的な運営に向けて公共機関の関与を強化。自治体が認可を持ち続けられるようにし、手続きの省略を図る。災害時の施設復旧なども含め、最終的な住民への給水責任を自治体に残す。
欧州などの海外では、民間事業者の参入が水道料金の高騰や水質悪化につながり、公営化に戻すという事例もある。同様の事態に陥らないよう、改正法では最終的なモニタリング手段として、国が料金設定も含め自治体の事業計画を審査する「許可制」を採用。民間事業者への立ち入り調査も行う。
厚労省によると、改正水道法によるコンセッション方式の導入は「公共機関による規制強化を図ったもので、水道事業自体を民営化するものではない。あくまで官民連携の選択肢の一つであり、自治体の判断で導入されることになる」(医薬・生活衛生局水道課)と強調。豊富な実績がある外資系企業だけが参入できるという誤った懸念もある中、「国内企業も浄水場の運転管理など十分な実績がある。運営権者は透明、公平に選定する仕組みになっている」(同)と指摘する。
現在、国内の水道事業でコンセッションが導入された実績はなく、民間企業にとっては新たなビジネスチャンスとなる。仙台空港や愛知県有料道路、愛知県国際展示場で運営者としてコンセッション事業の実績がある前田建設は昨年、世界規模で水事業を展開するフランスのスエズと覚書を交換。国内での上下水道事業のコンセッション事業参画をにらんだ活動を共同展開していく予定だ。
改正水道法では高度成長期に集中整備され、老朽ストックが増えている水道施設の維持管理・更新を着実に進める制度も導入。水道事業者に水道関連施設の維持・修繕の実施を義務付ける。施設の基礎情報をまとめた台帳の作成・保管も規定。長期視点での計画的な更新と、更新事業の見通しや収支予測の作成と公表にも努めるよう求める。
老朽化が特に深刻なのが水道の基幹施設である管路だ。厚労省によると、全国にあるストック(総延長約66万キロ)のうち、法定耐用年数(40年)を超えた割合は16年度時点で14・8%と、10年前の2倍超に増加。更新率は16年度時点で15年前の半分となる0・75%に落ち込んでいる。現在、年間で約2万件の漏水・破損事故が発生している。
改正水道法は大部分が公布(18年12月12日)から1年以内に施行される。水道施設台帳の作成・保管規定に関する施行日は3年以内に政令で別途定める。
厚労省は今夏をめどに政令や省令、告示をまとめ、改正水道法の施行日などを決める。コンセッション方式の許可申請や水道施設の維持・修繕方法に関する指針も作る。
残り50%掲載日: 2019年1月22日 | presented by 日刊建設工業新聞