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スコープ/東京都、築地市場跡地を創発MICE拠点に/ブランド力発信、40年代完成
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>東京都は1月、都心に残された最後の大規模公有地とされる「築地市場跡地」(中央区)の街づくり方針をまとめた。既存のMICE(国際的イベント)の枠を超え、東京のブランド力を創出・発信する「創発MICE」の実現に挑む考え。民間活力を最大限活用し、国際会議場や大規模な集客・交流施設など、さまざまな機能を集約。2040年代をめどに「東京の活力向上に大きく寄与する国際的な交流拠点」(小池百合子知事)の形成を目指す。
築地市場は1935年に開場し、「東京の台所」として市場関係者や仕入れ業者、観光客など多くの人でにぎわってきた。昨年10月、場内にあった中央卸売市場の機能を豊洲市場(江東区)に移転させ、80年以上の長い歴史に幕を閉じた。
跡地は東京ドーム約5個分の広さに当たる23ヘクタール。広大な敷地の南側は隅田川、西側は浜離宮恩賜庭園に面する。大規模開発が相次ぎ進行する都心部では、開発用地の争奪戦が激化しており、築地市場跡地は立地や周辺環境を含め「ロケーションとアクセスが良く、これ以上ない敷地」(小池知事)。大手デベロッパーも「開発用地として潜在能力が高い」と熱視線を送る。
現在は既存建物の解体工事中で、2020年東京五輪・パラリンピックの選手や大会関係者が使用する仮設の輸送拠点として使用した後、開発を本格化させる。
跡地開発を巡る関心が高まる中、都は1月23日に跡地の将来像や再整備の手順などをまとめた「築地まちづくり方針(素案)」を公表した。一般からの意見募集を経て3月末ごろに正式決定する。
素案は、跡地を▽おもてなしゾーン▽交流促進ゾーン▽ゲートゾーン▽水辺の顔づくりゾーン-の四つに区分けし、誘導する機能を示した。
おもてなしゾーンは浜離宮恩賜庭園側に位置する。景観に優れる立地を生かし、国際会議場や上質なホテルを配置する。交流促進ゾーンは中心部に配置し、集客・交流施設、研究開発施設を設ける。ゲートゾーンは晴海通り側にあり、交通ターミナルや、ホテル、サービスアパートメント(SA)を置く。水辺の顔づくりゾーンは、船着き場をはじめ水辺を活用したにぎわい空間とする。
こうした施設は、中期(約10~20年)と長期(50年以上)の定期借地権契約で民間事業者に土地を貸し付け、整備・運営してもらう。施設整備は4段階(ゼロ~第3)に分けて進める。段階はゲートゾーン一帯がゼロ、おもてなしゾーン一帯は第1、中央部が第2。定期借地権は、ゼロ段階が中期、それ以外は長期を想定。ゲートゾーン一帯は、20年ごろに民間事業者の募集を開始する。第1段階は22年ごろ、第2段階は20年代半ばにそれぞれ事業者を募集する。ゼロ段階は定期借地権契約終了後、周辺のインフラ整備の進捗(しんちょく)などを踏まえ、第3段階として再整備する計画だ。民間事業者の選定を工程ごとに分割するか、一括で行うかは決まっていない。
都が目指す「創発MICE」は、国際会議場などの機能を中核としながら文化・芸術、先端技術やデザイン、スポーツ・健康増進といったさまざまな機能が相乗効果を発揮するような従来のMICEの概念を超える意味の造語だ。
長年、築地市場とともに歩んできた地元の中央区は、都が公表した素案の内容に期待を示すとともに「隣接する場外市場のにぎわいと、築地の食文化の継承にもしっかりと目を向けていただきたい」(松岡広亮都市整備部長)と求めている。跡地の開発に関し、小池知事は、食のテーマパーク機能などを持つ新たな場へと造り替える方針を17年に表明したが、「食」をテーマににぎわいを見せる豊洲市場に配慮してか、素案には反映されなかった。過去の発言と素案との整合性を問う声が出ており、小池知事は「食のテーマパークを超えて、ウェルネスや文化を含めた形で(創発MICE)を展開する」と説明した。今後都は、跡地開発を巡って仲卸業者などと丁寧に話し合うという。
民間から自由で幅広いアイデアを募ろうと、都は素案に示す内容を大枠にとどめた。「長期的な話ではあるが国際会議場や、大規模集客・交流施設などの実現の可能性は十分あるのではないか」。そう語る三菱地所の担当者をはじめ、民間事業者は素案を前向きに捉え、新しい街づくりに意欲を見せる。
規模が大きく、魅力的な街づくりが進むならば都市としての国際競争力の強化につながるだけに、国土交通省からは「(現在の)都市計画制度を超えた対応が必要になるかもしれない」という見方が出ており、跡地開発の動向が注目される。
残り50%掲載日: 2019年2月5日 | presented by 日刊建設工業新聞