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対談・建築家 佐藤尚巳氏×JSCA会長 森高英夫氏/都の市場問題を振り返る
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【業界全体で声上げる課題/余計な不安与えないのが専門家の使命】 築地市場から豊洲市場への移転と市場のあり方について情報公開と専門的見地から知見を集約するために設置された東京都の市場問題プロジェクトチーム(PT)が11カ月にわたる議論を終えて8月に解散した。完成した建物の安全性をめぐり専門家である問題提起者と設計者、委員が公の場で議論を交わすなど異例の展開をみせた。PT委員のうち、建築家の佐藤尚巳氏と森高英夫日本建築構造技術者協会(JSCA)会長が対談して、PTを振り返るとともに専門家の役割を再考してもらった。 (聞き手・編集局 今野英司)■正しく構造を理解される技量 --PTを振り返っていかがですか 森高 PTの最初のテーマとして“建物の構造計算”が示されました。確かに構造計算は構造設計業務の一部ですが、それが構造設計者の業務そのものとして独り歩きする懸念を感じました。われわれの職能が全く理解されていないことを痛感し、それ以降、機会をとらえてはJSCA会員に“構造の専門家として正しく理解される技量も大事だ”と説いています。 佐藤 目標に向かって作業をするのがプロジェクトチームという認識がありました。テレビや新聞をにぎわせていた“謎の地下空間”などの不安を払拭(ふっしょく)し、移転に向けた前向きな議論の場ととらえていました。ふたを開けると“豊洲市場はダメだ”という前提があり、これに対して専門家として1つずつ反証していきました。豊洲市場の価値を毀損(きそん)し、築地市場を再整備するためのPTだったのではという疑念さえ抱いています。小池百合子知事は9年前に猪口邦子氏と佐藤ゆかり氏との共著である『東京WOMEN大作戦』の中で、既に築地の再整備に言及しており、その思いを実現しようとしたのではないでしょうか。 ■設計者は守秘義務で反論困難 --問題提起者と設計者による議論が公の場で展開されました 森高 事前にメディアで建物の安全性への疑義が喧伝(けんでん)されたため、2回目のPTは特に注目されました。全体の議論の入り口であるこの問題をしっかりとクリアできなければ、ここで終わるのではないかという危機感もありました。問題提起者は構造の専門家ですが、構造計算書と図面の齟齬(そご)を見つけることはできても設計思想までは読み取れていなかったのだと思います。 あれだけ建物の安全性について報じられていましたが、設計者は守秘義務があるため、公に反論するのは難しいのが現状です。そのままフェイクニュースが拡散されるという問題もあります。PTの中で問題提起者が実際に予測される振動以上に模型を大きく揺らして見せました。あれは完全にミスリードで、インターネットの配信やテレビで見た専門外の人は信じてしまいます。余計な不安を与えないことが専門家の重要な使命だと改めて考えさせられました。
残り50%掲載日: 2017年12月6日 | presented by 建設通信新聞