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  • 連載・建設産業・新時代の視座 No.26/コンプライアンス(2)

    【制裁強化重視に大きな反発/独禁法 拙速な改正を懸念】

     

     2006年1月4日に施行された「独占禁止法の一部を改正する法律」(改正独禁法)では、課徴金の引き上げとともに、課徴金減免制度(リーニエンシー)が導入された。課徴金の算定率は、大企業が従来の6%から原則10%、中小企業は3%から4%にそれぞれ引き上げられた。リーニエンシーは、談合情報などを自主申告した場合、立入検査前の1番目の申請者は課徴金を免除し、2番目は50%、3番目は30%減額する仕組み。情報提供者に課徴金の減額、免除という「アメ」を与えることで通報を促すとともに、証拠の収集を容易にする狙いがある。

     

     談合などへの抑止力強化に向けた独禁法の措置体系見直しは、公正な競争政策の確立に向け、「市場の番人たる公正取引委員会の体制を強化する」という方針を掲げた小泉政権下で検討が具体化する。号令を受けた公正取引委員会は「21世紀にふさわしい競争政策を考える懇談会」「独占禁止法研究会」で独禁法違反に対する抑止力強化の方向性を固めていく。公取委が03年10月に公表した研究会報告書には、課徴金の大幅な引き上げやリーニエンシーの導入などが盛り込まれ、04年4月にまとめられた独禁法改正案に反映された。

     

     一連の制裁強化に対しては建設業界から大きな反発が巻き起こった。日本土木工業協会、日本建設業団体連合会、建築業協会は03年12月1日付で研究会報告書に対する連名の意見書を公取委に提出し、十分な議論を尽くさないままでの拙速な改正に強い懸念を示した。

     

     意見書では、「変化する市場経済の中で、独禁法措置体系を市場実態に即したものにすることに異論はない」とした上で、「違反行為排除には、適切な競争政策実現のための市場環境整備とともに、ダンピング(過度な安値受注)防止など総合的な観点からの取り組みが不可欠」とし、独禁法改正へ向けた議論が事業者への罰則、制裁強化だけを重視する傾向を問題視した。

     

     違反事業者には課徴金以外にも、違約金、損害賠償、指名停止、営業停止措置などが課されることとなり、さらなる課徴金の大幅な引き上げは、憲法で禁じている「二重処罰」に抵触するとの指摘のほか、密告を奨励するリーニエンシーは日本の風土にそぐわず、法体系上にも問題があるという声も上がった。

     

     改正法案は04年10月に臨時国会に提出されたが、大幅な見直し内容は法曹界、政界、経済界を巻き込んだ議論を呼び、翌年の通常国会に継続審議として持ち越され、05年4月に成立した。

     

     課徴金の引き上げやリーニエンシー導入など、企業経営に大きなインパクトを与える改正は法令順守に向けた企業体質の改善を否応なしに後押しすることになる。改正独禁法が成立した05年には、国土交通省発注の鋼橋上部工事での談合を踏まえ、同省が「入札談合の再発防止対策」を公表。大規模・組織的な談合に対する指名停止期間を最大24カ月に延長したほか、違約金の上乗せを打ち出す。不正行為への相次ぐペナルティー強化によって外堀が埋められていく中、建設業界は歴史的な決断による転換点を迎える。

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    掲載日: 2019年2月27日 | presented by 建設通信新聞

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