当サイトについて 採用ご担当者様
会員登録はこちら 求人検索

建設技術者向けNEWS

建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!

  • 技術裏表・AICON

    【熟練技能者の目線映像、動線を記録/アイマップシステムを現場試行/正確な歩掛かり把握が現場を変える】

     

     国土交通省が、内閣府の「官民研究開発投資拡大プログラム」(PRISM)を活用して募集した『建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト』に採択されたAICON(アイマップイノベーションコンソーシアム)の「Ai-MAP SYSTEM」(アイマップシステム)の現場試行が始まった。熟練技能者の目線映像や動線を記録して技能伝承に生かせるだけでなく、技能者の動きから生産性の向上につながるトリガー(きっかけ)の発見にも生かせる。現場作業に焦点を当てた改善の一つひとつが、未来の建設生産現場の姿を変えていく。 AICONは、淺沼組、先端建設技術センター、岐阜大学、ミオシステムが参加。アイマップシステムは、複数のツールで構成する技術で、試行現場となった「大和御所道路曲川高架橋曽我地区下部工事」(奈良県橿原市、発注者=国交省近畿地方整備局、施工=淺沼組、濱田龍馬所長)では、「Ai-LOGGER」(アイ・ロガー)と「Ai-TEC」(アイ・テック)を活用した。

     

     アイ・ロガーは、技能者のヘルメットに付けたGPS(全地球測位システム)とモーションセンサー内蔵型カメラ、センシング技術を組み合わせて自己位置を推定し、地図上に動線軌跡と技能者の目線映像を記録できる。試行現場では、技能者3人が場所打ち杭の施工で現場状況に応じて自らの役割を判断し、自律的に動ける熟練作業班がアイ・ロガーを取り付けたヘルメットを装着。熟練の動きを逐一、記録した。

     

     装置自体の重量は350グラム程度で技能者からも「全然、苦にならない」という評判だ。高所作業で当たり前の動作として安全帯を掛ける。鉄筋カゴの継ぎ足しで、担当の鉄筋結束個所を自分で判断し、3人で流れるように結束する。すべての目線映像が動線記録とひも付けされ、エリアや時間帯、作業内容に応じて「見たい映像」を任意で閲覧できるシステムにする考え。淺沼組の田村泰史土木事業本部建設マネジメント室課長が「熟練の作業班が経験で築いた効率的な動きを残す必要がある」とし、先端建設技術センターの稲垣孝先端建設技術研究所研究部次長も「先端技術を活用した技能伝承の方法になる」と語るように、すべての映像・動線記録が若い作業員に対する絶好の教材となる。

     

     稼働中の現場でも「時間が掛かっている作業の発見や、作業効率が上がる機械・資材の配置といった生産性を上げるトリガーを探れる」(田村課長)。技術者に作業の効率化の“気付き”を与えるシステムにすることが最大の狙いだ。今回の場所打ち杭の作業の歩掛かりは、1日当たり0.5本(2日で1本)でスタートしており、「最終的には1日当たり0.7本、3日で2本にまで上げたい」(同)と話す。

     

     生産性を測る指標では通常、「1日当たり現場で何人働いたか」を示す場合が多いが、アイ・ロガーの記録を使えば、より詳細に「杭1本当たりの投入人数と一人ひとりの現場での稼働時間」という歩掛かりが残せる。夏と冬の歩掛かりの違いといったことも“見える化”できる。濱田所長は「生産性向上が大きな課題となる中、これからは正確な歩掛りの把握が重要になる」と期待を寄せる。技能者の行動記録を踏まえた作業進捗を予想できる「Ai-SYS」(アイ・シス)にアイ・ロガーで収集したデータを反映すれば、より正確な工程予測も可能だ。

     

     いわば、現場作業に関わるビッグデータであり、使い方次第で可能性は大きく広がる。稲垣次長は「建設キャリアアップシステムと連携すれば、技能者の技能評価にも活用できるのではないか」と活用方法を提案。「現場での所作や知恵、ノウハウも評価でき、技能者の地位向上に役立つ」と強調する。不具合や事故が発生した際のエビデンス(証拠)にするといった活用方法も可能だ。

     

     モバイル端末で遠隔地の管理者と現場技術者がコミュニケーションを取れるアイ・テックも搭載。端末に現場の状況などを映し出しながら監督官に状況を報告し、監督官は画面上に指摘事項などを直接書き込める。「正式な検査での活用は認められないが、自主管理や施工プロセスチェック、発注者による現場の進捗確認などは監督官が足を運んで現場を止めることなくできる」(稲垣次長)と期待を寄せる。

    残り50%
    ログインして続きを読む 会員でない方はこちらよりご登録ください

    掲載日: 2019年3月1日 | presented by 建設通信新聞

前の記事記事一覧次の記事