当サイトについて 採用ご担当者様
会員登録はこちら 求人検索

建設技術者向けNEWS

建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!

  • 東日本大震災から8年/発展的復興を後押し/復興道路の開通相次ぐ/ストック効果が発現

     東日本大震災からきょう11日で8年を迎える。いまだ多くの被災者が不自由な生活を強いられており、復興は道半ばといえる。一方で基幹インフラの整備に関しては、港湾の復旧が完了したほか、復興道路・復興支援道路などの開通も相次いでいる。これらの施設は急速にストック効果の発現をみせており、東北の発展的な復興を力強く後押ししている。インフラ整備を中心に被災3県(岩手、宮城、福島)の現状をまとめた。

     

     岩手県内ではこの1年、復興道路・復興支援道路の整備が着実に進んだ。9日には東北横断自動車道釜石秋田線・釜石道路(6.0㎞)が開通し、釜石市から花巻市までの約80㌔が高速道路で結ばれた。沿岸被災地の復興支援や観光拠点へのアクセス性向上はもとより、9、10の両月に釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムで試合が行われるラグビーワールドカップ2019TM日本大会の成功を後押しする。

     

     縦軸の三陸沿岸道路は、昨年3月に宮古田老道路の一部と田老岩泉道路の全線、ことし1月に釜石山田道路の大槌IC~山田南IC間、さらに3月9日には釜石南IC~釜石両石IC間も開通。強靱で信頼性の高い高速ネットワークが形成されつつある。

     

     港湾の復旧・復興も顕著だ。昨年3月に湾口防波堤の復旧が完了した釜石港では、ガントリークレーンや縦横両軸の高速道路整備、外貿定期コンテナ航路の開設などにより、18年のコンテナ取扱量が7608TEUと前年実績(3724TEU)の約2倍になった。

     

     同6月には宮古市と北海道室蘭市を結ぶフェリー航路が開設され、新たな交流ネットワークが形成された。宮古港にはことし4月、岩手県初の10万t超級大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」も寄港する予定だ。

     

     県や市町村が沿岸部で建設を進めている災害公営住宅は、計画戸数5552戸に対して18年12月末時点で99.4%に当たる5517戸が完成した。

     

     復興まちづくり(面整備)事業は、漁業集落防災機能強化事業465区画すべてが完了したほか、防災集団移転促進事業も2103区画のうち99.3%の2089区画、土地区画整理事業は4911区画中4114区画、84.0%まで進んだ。

     

     一方、海岸保全施設などの整備は県担当分が約6割、市町村担当分も約5割の完了にとどまっている。

     

     このほか、陸前高田市では震災津波の事実と教訓を世界および次世代に継承していく施設として高田松原津波復興祈念公園の整備が着々と進められている。

     

     震災により定住人口の減少が加速した沿岸部だが、縦横両軸の高速ネットワークや機能が拡充された港湾などのストックが交流人口の拡大や、物流の効率化といった効果を生み出している。

     

    ◆宮城県

     

     宮城県内では2月、三陸沿岸道路の歌津IC~小泉海岸IC間(10.0㎞)と、本吉津谷~大谷海岸IC間(4.0㎞)が開通した。これにより仙台市と気仙沼市が高速道路で接続され、さらなる交流人口の拡大が期待される。

     

     4月7日には、県が震災復興のシンボルと位置付け、気仙沼市内で建設を進めていた気仙沼大島大橋が供用を開始する。同市本土と離島・大島を結ぶ海上橋で、島民の利便性の向上や活性化に加え、災害時の円滑な救急医療や救援活動など多岐にわたる役割が期待されている。

     

     東北唯一の国際拠点港湾である仙台塩釜港では、18年のコンテナ貨物取扱量が速報値で約27万8000TEUとなり4年連続で過去最高を更新した。

     

     同港では昨年12月、上海など中国沿岸部4港を直接結ぶ国際コンテナ定期航路が開業した。今後も見込まれる取扱量の増加に対応するため、高砂3号岸壁の工事にも着手している。

     

     東北地方の“空の玄関”となる仙台空港(名取市・岩沼市)では、17年度の乗降客数が過去最高の約343万人を記録。港湾や空港がある沿岸部の復興が着実に進む一方で、仙台駅がある都心部へ向かう交通需要の高まりが渋滞を引き起こし、物流や道路交通の新たな課題になっている。

     

     このため、仙台東部地区と仙台駅をつなぐ新たな東西軸の整備が期待されており、東北地方整備局は今年度、仙台東道路の概略ルートなどの検討に着手した。

     

     被災地の生活再建に向け、県が県内21市町村に整備している災害公営住宅1万5823戸は、3月末までにすべての整備を完了する見通しであるほか、195地区で計画されている防災集団移転促進事業でも全地区で造成工事が完成する予定だ。土地区画整理事業も全35地区のうち34地区で住宅の整備等が可能となる見込み。

     

     20年度を最終年度とする県の震災復興計画が終盤を迎えつつある中、県は公共施設再編や県民会館のあり方の検討をスタートさせ、復興後を見据えた取り組みも動き始めている。

     

    ◆福島県

     

     福島県内では、東北地方整備局が福島・山形・秋田3県を結ぶ東北中央自動車道(約268㌔)の整備を推進している。昨年3月には同道路の一部で相馬市から桑折町まで県内を横断して常磐と東北両自動車道を連結する相馬福島道路(約45㎞)の相馬玉野~霊山両IC間(17.0㎞)が開通し、全体の約6割が完成した。19年度中には起点部分の相馬西道路(6.0㎞)の開通を予定しており、さらに沿岸部の復興に弾みが付く。

     

     一方、県は原発事故に伴う沿岸部の避難指示区域と主要都市を連結する「ふくしま復興再生道路」を整備中だ。8路線29工区(約82.5㎞)からなり、18年12月時点では11工区が供用済み、15工区が施工中、残り3工区は設計または用地取得中となっている。

     

     また、11月には会津美里町および昭和村境に県管理道路では最長の道路トンネルとなる「国道401号博士トンネル工事」(長さ4503m)に本格着工した。同トンネルは、会津若松市から群馬県沼田市に至る長さ220㎞におよぶ基幹道路のボトルネックを解消し、住民・物流・救急医療機関の良好な連携を促す地方創生の礎となる。20年度までの貫通を目標に整備を進めている。

     

     港湾では、津波により甚大な被害を受けた相馬港沖防波堤(長さ2730m)が、18年3月末で復旧を完了した。同港では、復旧工事に並行して石油資源開発の相馬LNG基地や、福島ガス発電による天然ガス火力発電所の開発が進められている。ともに20年春の運転開始を予定しており、エネルギー拠点港としてさらなる発展・拡大が期待される。

     

     原子力災害に伴う避難者向けの復興公営住宅は、計画戸数4890戸のうち、3月末で97.5%に当たる4767戸が完成する見通しだ。

     

     このほか、昨年は長期的に食の安全性や農学に関する教育・研究を一体的・実践的に行う福島大学農学群食農学類研究棟、理学療法士ら医療従事者の養成施設となる県立医科大保健科学部棟の工事が始められるなど、次世代の育成に向けたプロジェクトが動き出している。

    残り50%
    ログインして続きを読む 会員でない方はこちらよりご登録ください

    掲載日: 2019年3月11日 | presented by 建設通信新聞

前の記事記事一覧次の記事