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  • 建設論評・「3・11」を繰り返すな

     2011年3月11日から8年が経った。東日本大震災(3・11)では犠牲者が関東大震災の10万5000人、明治三陸津波の2万2000人に次ぐ1万8400人強という多数だった上に、現代の社会を反映した新しい被害が大きかった点にも注目したい。

     

     犠牲者の大半は地震動ではなく津波により被害に遭った。防潮堤も建設されてはいたが計画高を上回る津波という想定外の事象に対処できなかった。

     

     構造物の多くは安全が保たれたが、延長の長いライフラインや交通路などは部分の被災で全体の機能が失われてしまい、それが被害の拡大をもたらし、救援・復興を妨げるものとなった。

     

     さらに大きな影響は、危険地区の市街化、不十分な避難システムなどソフトに関連する被害に見られる。新しい被害の形態として広範な地域での地盤流動化によるものも挙げられる。

     

     一層深刻な災害として福島原発事故がある。これは地震動による外部電源喪失、津波による非常用自家発電の停止で全電源喪失となり、炉心のメルトダウンというわが国が初めて経験する苛酷な災害となったのである。3・11の直接被害額は19兆-25兆円とされているが、これには原発関連の被害は入っていない。

     

     避難者は47万人に達したが、そのうち16万人が原発事故によるもので、現在も避難している8万人の大半は原発事故による帰還困難者である。避難者から多数の関連死者が発生したことも新しい被害の形態である。

     

     間接被害が大きかったのも3・11の特徴である。物流の停止は我国だけでなく、世界の経済に影響した。首都圏では515万人という帰宅難民が発生した。

     

     間接被害額の発表はないが、来るべき南海トラフ地震では直接被害の約8倍の巨額という土木学会の推計が参考になる。

     

     新しい間接被害としては、原発事故の風評による農水産物、観光への打撃が大きい。原発事故によりわが国のエネルギー政策の基礎が揺らぎ、地球温暖化対策も関係するのにいまに至るも原発の位置付けができないことも間接被害であろう。

     

     広義の意味で、3・11でインフラは社会を守れなかったのであるが、部分的には成功している点もある。運転中の新幹線はすべて無事に停車したし、高速道路も無事で避難路ともなった。救援のための道路の啓開は、いわゆる「くしの歯作戦」により早期に成功している。これらの経験も重要な教訓を与えてくれる。

     

     インフラにはさらに復興という業務がある。復興とは街が繁栄を取り戻すことである。まだ多数の避難者・帰還困難者がいること、社会的に少子高齢化と人口減少傾向が続いていることから、インフラはこの問題にも取り組まねばならない。

     

     復興とともに来るべき巨大災害に対しては、3・11の教訓を生かしたハード・ソフトの対策も実行しなければならない。対策の中でも重要なのは、計画を超える事象も想定しておくことであろう。インフラの責任は広くかつ重いのである。

     

    (地)

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    掲載日: 2019年3月11日 | presented by 建設通信新聞

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