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  • スコープ/奥村組ら6者コンソ/AIで現場の作業状況分析

    ◇施工改善支援システムで生産性向上

     

     カメラやセンサーによるデータを人工知能(AI)で解析し、現場の作業員や建設機械の作業状況を分析することで、停滞作業の抽出、改善策を立案・実行し、生産性を向上させる-。こうした取り組みが中部地方整備局発注の「平成29年度東海環状高富IC北地区道路建設工事」(岐阜県山県市)で試行されている。奥村組を代表者とする6者コンソーシアムが「映像認識AIとデジタルツインを用いた施工改善支援システム」を同工事に適用。既に省人化でき、生産性の向上につながることを確認している。

     

     この試行業務は、国土交通省が昨年公募した「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト(PRISM)」の一つとして行われている。工事は東海環状線の高富インターチェンジ(IC)北地区の築造工事で、工事延長は500メートル。工事内容は道路土工盛り土20万立方メートル、地盤改良工7400立方メートル、擁壁工・逆T擁壁65メートル、補強土壁工3900平方メートル。このうち、〈1〉壁材(スキンプレート)を垂直に設置〈2〉それを引っ張る帯状の鋼製補強材(ストリップバー)を敷設〈3〉盛り土の作業サイクルを何度も繰り返して擁壁を完成させる補強土壁工-に同システムを適用している。

     

     同システムを開発したのは奥村組を代表者とするパスコ、ジャパンギャランティサービス、伊藤忠テクノソリューションズ、大阪大学大学院工学研究科、日本建設機械施工協会施工技術総合研究所の6者コンソーシアム。システムはセンサーによって建設機械の稼働状況などを把握する「IoT(モノのインターネット)/センシング技術」、クラウド接続型カメラで現場の作業員や建設機械などを認識し動線を分析する「AI/分析技術」、地形データと構築物モデルを組み合わせて3次元(3D)で表示する「統合3Dモデル」などで構成される。

     

     センシング技術では、建設機械の稼働時間を自動で数値化・グラフ化する。AI・分析技術では現場の映像データをAIで解析して作業員や資機材の位置や動き、建設機械の動きを割り出し、作業状況を分析した上で、歩掛かりを算出、グラフ化する。こうした映像解析データなどを、現場の施工進捗(しんちょく)状況などを付加した「統合3Dモデル」に重ね合わせた3Dデータ「デジタルツイン」により、現場の作業員や建設機械の動きなどを確認しながら、施工上の改善策を検討する。

     

     奥村組ICT戦略室の瀬戸康平室長は「土木工事では、機械化などの要素はあるもののトンネル掘削などの繰り返し作業を効率化することで生産性が向上できたケースが多い。補強土壁工は基本的に繰り返し作業となるので、施工上の改善の余地があると考え、同システムを適用した」と、導入の狙いを説明。さらに、「汎用性を考え、画像データを現場事務所に設置したサーバーで一時処理を行うエッジ処理とせずに、クラウド上でAI解析を行うようにした。これにより現場ではサーバー保守等の管理が必要なく、作業の進行状況に合わせてカメラの位置を移動させるなどの管理だけで済むため、同システム導入による現場の負担軽減にもつながっている」という。

     

     現場内でセンサーを搭載しているのはバックホウ、ブルドーザー、ローラーだけ。ダンプトラックや作業員、使用する建設資材であるスキンプレート、ストリップバーはクラウド接続型カメラの映像だけで、AIが作業員や資機材の位置などを割り出し、作業状況を分析する。例えば午前9~10時の1時間の作業状況として盛り土の敷きならしや転圧、スキンプレートの設置、ストリップバーの敷設など、それぞれの作業に費やした時間を即時にグラフなど見える化し確認することができる。

     

     改善策の検討に当たって活用する「デジタルツイン」は、従来の3DデータにAIで解析したデータを重ね合わせ、建設機械や資機材、作業員の位置なども表示する。現場の作業打ち合わせ時に、デジタルツインの3Dデータを見ながら、資機材の置き場所やバックホウの動線などを変更し、作業時間の短縮や効率化を図る。デジタルツインは現地でもiPadなどを使って確認することができる。

     

     瀬戸室長は「海外の建設業ではトヨタのカイゼン方式を建設事業に適用する“リーンコンストラクション”の研究が進んでいる。当社もこれらの先行事例を参考に、カイゼン方式の特長である現場の“視える化”や“自動化”を進め、施工上の無駄を排除し、生産性の向上を進めたい」とした。この現場のカイゼン活動としては「一例だがスキンプレート設置の施工手順を変更した。これにより作業時間全体に占める建設機械の待機時間の割合を6%から1%に削減できた」と強調。さらに、目視による建設機械の稼働状況の確認や歩掛かり調査の業務を大幅に省人化できたという。

     

     今回の試行ではAIで解析するクラウド接続型カメラを1台だけとしたが、今後複数台設置した際の膨大な画像処理の方法や、カメラの位置を変えた際にAIの学習時との撮影条件に差異が生じAIの認識精度が低下するなどの課題も分かった。奥村組ではこうした課題の解決に向け、さらに検討を加え、早期の実用化にこぎ着けたい考えだ。

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    掲載日: 2019年4月17日 | presented by 日刊建設工業新聞

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