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平成を振り返る/魅力ある産業へ試された30年/「人」や「現場」が焦点に
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>「平成」があと4日で幕を閉じる。バブル崩壊や阪神・淡路大震災、国土交通省発足、政権交代、東日本大震災など、平成の出来事は建設業界の盛衰に結び付く。建設業への風当たりや建設投資の浮き沈みといった紆余(うよ)曲折を糧に、魅力ある産業へと試行錯誤を重ねた30年間の歩みを振り返る。=2、3、4、10面に関連
1989(平成元)年からの10年は建設産業の転機となった。消費税は国民や企業の価値観に影響を与え、価格転嫁を巡る動きが活発化した。日経平均株価は史上最高値(3万8915円)を記録し、建設投資は初の70兆円台(ピークは1992年度84兆円)に。旺盛な建設需要は人手不足をクローズアップさせた。米国が建設市場の開放を迫り、1990年には独占禁止法違反の制裁強化や制限付き一般競争入札導入の要望が出た。日米構造協議の結果、内需拡大策として430兆円規模の公共投資基本計画が閣議決定した。
経済の潮目が変わったのは景気が後退局面に入った1991年。翌年には地価公示が17年ぶりに下落しバブル崩壊が現実となった。積極的な公共投資が行われたものの、建設業への風当たりが強まる事件も少なくなかった。1994年導入の一般競争入札は、ダンピングや品質確保の対策も促した。1995年の阪神・淡路大震災は構造物の安全性を根底から覆した。横倒しになった高速道路など、日常が一変した都市の姿は人々の脳裏に刻まれ、耐震改修促進法の整備が進んだ。
1996年はWTO政府調達協定が発効され、海外企業の参入が始まるが不況の影響が深刻化。財政構造改革法は市場を冷やし、1997年には経営破綻する企業が目立ってしまう。長野冬季五輪に日本中が沸いた1998年は、不良資産処理に伴う赤字決算や早期退職者の募集など、厳しい経営が強いられた。
1999年、建設省(現国土交通省)は国内公共工事で初となる総合評価方式の入札を実施。価格以外の要素も含めて落札者を決める制度が動きだした。同年には、建設省が「建設産業再生プログラム」を策定。ゼネコンの経営組織の革新や連携の強化が打ち出され、一部ゼネコンの合併など業界再編が進むことになる。
2001年に一括下請負全面禁止などを盛り込んだ公共工事入札契約適正化法、03年には官製談合防止法が施行された。05年施行の公共工事品質確保促進法では、総合評価方式が原則化された。06年には課徴金減免制度の導入などを盛り込んだ改正独占禁止法が施行。コンプライアンス(法令順守)への認識が高まる中、日本土木工業協会(現日本建設業連合会)が、旧来のしきたりから決別する、いわゆる脱談合宣言を行った。
01年に建設、運輸、国土、北海道開発の4省庁が統合され、国土交通省が発足。05年には道路関係4公団が民営化されるなど行政組織も変わっていった。建築分野では、05年に耐震偽装問題が発覚。構造計算書の第三者チェック(ピアチェック)などを柱とした建築基準法の改正や、建築士制度の抜本見直しを図る建築士法の改正へとつながった。
08年秋に起こった世界規模の金融危機(リーマンショック)を起因として、日本全体に閉塞(へいそく)感が強まる中、09年9月に民主党政権が誕生した。「コンクリートから人へ」を掲げて公共事業費を大幅抑制した影響もあり、建設各社の業績低迷は深刻化した。
11年3月には戦後最大の自然災害となった東日本大震災が発生。官民挙げて復旧復興に全力を傾けた。12年12月には中央自動車道笹子トンネルで天井板崩落事故が起き、インフラ老朽化対策が加速。建設業の「地域の守り手」としての役割や重要性が増していった。
総選挙で圧勝し自民党が政権に復帰したのは12年末。政府は「強くしなやかな国土づくり」を目指し、国土強靱(きょうじん)化関連3法を施行。公共工事設計労務単価の引き上げ、担い手3法の施行など、矢継ぎ早に施策が講じられた。
16年4月の熊本地震をはじめ、18年は大阪北部地震、7月豪雨、台風21号、北海道胆振東部地震など全国で大規模災害が相次いだ。政府は18年12月に「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」を決定。災害時のインフラ機能の確保などに万全を期すという方針が鮮明になった。
国交省が建設現場の生産性向上策i-Constructionの導入へとかじを切り、働き方改革と生産性向上は官民ともにますます重要課題に。4月には「建設キャリアアップシステム」と「新在留資格(特定技能外国人)」が始動した。担い手の確保・育成のため“人”や“現場”に焦点を当て、サステナブルな建設産業として活躍し続ける環境を築く。これは「令和」の時代も変わることはない。
残り50%掲載日: 2019年4月26日 | presented by 日刊建設工業新聞