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  • 「令和」が幕開け/人材獲得で競争激化、働き方改革待ったなし/明確な経営ビジョンを

     令和の時代が幕を開けた。労働人口の減少など人材を巡る問題が深刻化する中、建設産業は担い手の確保・育成に向けた働き方改革や処遇改善、生産性向上などに取り組み、成果を生かしながら持続的発展の実現を目指すことになる。人工知能(AI)やロボットなど先進技術を取り込みながら改革を進めて時代の潮流に乗り、産業基盤をより強化することが求められている。

     

     人口減少は国の成長力をはじめ、社会・経済活動にさまざまな影響を及ぼす。総務省が4月に公表した人口推計(2018年10月1日時点)によると、総人口は前年から26・3万人減の1億2644万3000人となり、8年連続で減少した。15~64歳の生産年齢人口の割合は59・7%。比較可能な1950年以降で最低水準になった。一方で70歳以上の高齢人口が初めて2割を超えた。外国人の入国者数から出国者数を引いた社会増減は6年連続増の16・5万人で過去最多となった。

     

     人材の獲得競争が一段と激化することが予想される中、建設業界では官民協働で週休2日工事の促進や技能者の収入アップなど、働き手の環境改善に力を入れる。日本建設業連合会が15年3月にまとめた長期ビジョンでは25年度までに128万人程度の技能労働者が減少するとした上で、34歳以下(入職時)の若者を中心に90万人(うち女性20万人以上)の新規入職者の確保と生産性向上による35万人相当の省人化を目標に設定。20年度までの前半5年間を勝負の期間と位置づけ、業界全体で目標達成に向けた取り組みを推進する。

     

     人材不足の対応強化の一環で、改正出入国管理法(入管法)に基づく新在留資格(特定技能外国人)制度が4月からスタート。海外から多様な人材を集める動きも一段と強まっている。

     

     建築家の隈研吾氏は「日本人ばかりの閉じこもった職場に外国人が入ると雰囲気が良くなり、海外にも出やすくなる」と強調する。建設会社も国内需要の増減に左右されず、海外市場で継続的に活躍の場を広げるには、外国人材の確保・育成が大きな課題となる。

     

     厚生労働省の雇用政策研究会が1月に公表した労働力人口の将来推計を見ると、鉱業・建設業の就業者数は経済成長と労働参加が進むケースで25年が452万人、40年が288万人、進まないケースでは25年が439万人、40年が272万人。17年実績の493万人から今後20年余りで半分近く減少するとの見方を示す。

     

     中長期的に労働力の需給バランスが崩れ、労働者への負荷増大が懸念される。建設経済研究所が4月に公表した将来推計では、現場の生産性向上が進まなければ、20年度にも技術者・技能者が不足する可能性を指摘。竹歳誠理事長は「建設産業行政の重要な役割は、現場の最前線で働く人たちを守ることだ」と訴える。

     

     東京大学大学院の小澤一雅教授は「建設業は雇用の受け皿として国も保護する姿勢を取ってきたが、今は人がいないことを受けて生産性向上を推進するなど、政策を180度転換した。産業を支えるために外国人も入れないといけない。社会の状況は大きく変わってきている」と現状を分析。工事を発注する側には「現場のニーズに応えて、常により良い発注方式、よりふさわしい事業の進め方を考えるといった問題意識を持つ必要がある」と注文を付ける。

     

     ゼネコントップからは建設産業の方向性の一つとして「脱請負」というキーワードが挙がる。CSR(企業の社会的責任)からCSV(共有価値の創造)を重視した企業経営に注目が集まる中、従来のビジネスモデルを見直す動きが目立ってきた。

     

     平成の激動期の建設業界を経営者と団体幹部という立場から見てきた関係者は「社会がどう変わっていくかを考えると同時に、どういう社会にしていきたいかを思い描く。今後の企業経営にはこうした明確なビジョンが不可欠だ」と指摘する。自らの社会的価値を再考し、新たなビジョンと価値を創造することが、新時代を迎えた建設産業の命題となりそうだ。

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    掲載日: 2019年5月7日 | presented by 日刊建設工業新聞

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