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  • 五輪期間/都内現場は稼働する?しない?/建設業界は不安先行

    【舵取り役不在も深刻/下請けと職人「近郊で仕事」判断も】

      2020年夏季東京五輪の施設整備が急ピッチで進む一方で、大会期間中の都内建設現場の稼働に対する不安と不透明感も急速に高まっている。専門工事業が大会期間中の現場対応を確認しても、元請けは行政や民間発注者の対応をつかみかねて判断できない状況が続いているからだ。専門工事業は交通混雑緩和を理由に、現場が稼働するかどうか分からないなら、都内現場を一時的に離れ近郊で仕事をすることも選択肢としている。業界で不安が先行しているのは、いまのところ大会期間中の都内現場対応の判断を決定付ける舵(かじ)取り役が不在なことも背景にある。

     

     4月12日、東京都は20年五輪期間中の都発注工事を調整し、ボトルネック回避や車両数を削減する「都発注工事の調整に関する取り組み方針」を公表した。しかしこの公表が不安に拍車をかけることになる。調整することは明記されたが、具体的な対応は示されていなかったからだ。

     

     五輪開催期間中の都内現場対応に最も強い関心を抱くのは、専門工事業経営者と職人たちだ。専門工事業経営者にとって、「大会期間中、現場が制約されその後突貫工事を余儀なくされたら、余計なコストがかかって割に合わない。そんなことなら、都内以外の仕事をしていた方がまし」との判断が働く。日給月給の職人たちにとっても現場閉所の可能性もあるなら、都内近郊で安定して働きたい思いが募る。

     

     結果的に各専門工事業が元請け各社に、「早く情報が欲しい。そうじゃなければ、都内で仕事をするか、近郊にいくか決められない」と詰め寄る構図になっている。

     

     元請けにとっては、専門工事業から強く詰め寄られても応えられない状況が続いている。複数のゼネコントップは「東京都が公表したのは今後各局が取り組み方針に沿って具体策を検討・実施する考えだけで何も決まっていない。そもそも都発注工事は工事調整してくれるかもしれないが、民間発注者が工事の発注時期調整や一時休止を認めるのか。この問題を調整し解決する舵取り役が誰なのか分からない」と不安を募らせる。

     

     実はこの問題、業界側の対応に関しても舵取り役はいまのところいない。発注行政ごとに、対応する元請団体が異なっているのが理由だ。東京都が都発注工事だけでなく都内全体の工事調整のけん引役になれば、東京建設業協会がカウンターパートになる。

     

     ただ、民間発注者も含め大会期間中の都内建設工事の調整となると、国の関与として国土交通省が浮上するが、関東地方整備局が舵取り役になると業界側は日本建設業連合会関東支部となる。しかし、元請けにとってこの問題は支部を構成する支店ではなく、本社が判断する重要案件で、本社関与の思いが強い。

     

     結局、20年7月24日の五輪開会式から8月9日の閉会式、8月25日からのパラリンピック開会式から9月6日の閉会式の期間を中心に、都内建設現場はどれだけ稼働することが可能なのかどうか。1年後に迫った2020東京大会がスムーズに行われるため、都内建設現場はどのような対応をすべきか。公共・民間含め、発注時期や工期、工事一時停止などコストにも影響を与える課題の解決には、明確な舵取り役、行司が必要だ。しかしいまは、舵取り役不在の中、建設業界は不安だけが先行している。

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    掲載日: 2019年5月9日 | presented by 建設通信新聞

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