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  • 需要の変化に本業苦戦/市場環境好循環も晴れない悩み/「何を」「どこで」補う

    【時代の要請にどう応え取り込むか】

     

     防災・減災を目的に2020年度まで公共工事予算の確保を確実にしたことで、当面は環境の好循環が続くとみられる建設業界の中で苦戦を強いられている業界もある。業界内の供給力削減が間に合わず、市場が回復しても需給ギャップが解消されていないことが理由だ。需要の変化によって全体市場が回復基調でも本業が振るわず苦戦を強いられているという側面もある。 5月16日の会見で、プレストレスト・コンクリート建設業協会(PC建協)の藤井敏道会長は胸を張ってこう断言した。「今後、大規模修繕が拡大していくことは分かりきっている。1番問題になりそうなのは、安全と働き方改革だ」

     

     胸を張ったのには理由がある。18年度の会員企業受注額は前年度比16%増の3485億円と4年連続で3000億円台を維持、09年度から14年度まで6年続いた2000億円台水準の厳しい時期からの脱却に手応えを感じていたからだ。

     

     手応えは、3年間の集中投資を決めた国土強靱化の政府の取り組み、公物管理者に義務付けられた5年に1回のインフラ点検と老朽化インフラへの対応、生産性向上と品質確保などを理由にした工場製品の活用拡大など、さまざまな時代の要請が受注拡大につながった。

     

     時代の要請が業界の環境好転につながっているのは、PC建協とは同じ橋梁でも素材が異なる鋼鉄製橋梁業界の日本橋梁建設協会(橋建協)会員企業も同じ構図だ。唯一PC建協と違うのは、メタル橋の新設はピーク時の4分の1程度で低水準に歯止めがかかっているわけではない点だ。

     

     にもかかわらず、橋建協会員企業トップの顔色がPC建協会員同様に明るいのはなぜか。24日に開かれた橋建協総会後の懇親会。複数の企業トップは「工場はフル稼働」と笑顔を隠さない。新設メタル橋受注量の水準は低いのに工場がフル操業なのは、工場の生産ラインを本業のメタル橋向けから見直して、建築用鉄骨の加工・組み立てや、鋼鉄製セグメントなど増加する需要に応えていることが理由。本業のある部分の需要が増加しなくても、時代の要請に応える別需要が、市場低迷時にメーカーの大きな負担になってきた工場稼働率を補っている。

     

     一方、工事部門と工場部門を持つ橋梁メーカーと同じ企業構造を持つ道路関係業界の中でも、本業の苦戦がそのまま業界全体の景況感に直結しているのが道路舗装業界だ。

     

     5月21日、総会後に開かれた会見で日本道路建設業協会の西田義則会長は、防災・減災対応や大規模更新需要など市場拡大に伴う施工体制への取り組みについて、「合材製造量はピークの半分以下で余力は十分ある。工事については業界全体の技術者数の問題もあるので発注ロットの見直しを求めていきたい」と訴えた。

     

     工事施工と工場稼働の2本柱が企業を支えるという構図は、道路舗装業と橋梁メーカーも同じ。しかし、生産性向上や働き方改革、建設生産システムの変化など時代の要請を受け、さまざまな需要に応えている橋梁メーカーに対し、工場の主力製作商品がアスファルト合材と限定的なことが、企業収益と業界景況感の分かれ道になっている。

     

     ある道路会社トップは、「企業が保有する合材工場の設備更新・統合は進んでいない。構図は生コン業界と同じ、橋梁メーカーのようにはいかない」と話す。需要地との距離が販売の重要なかぎを握る地域産業の側面があり、設備統廃合を進めることの難しさを示した形だ。さらに、米中貿易摩擦による影響、例えば原油価格動向や世界的なエネルギー政策動向など、合材の原材料に関する不安要因も存在する。

     

     建設市場の規模拡大とその維持は、防災・減災、国土強靱化という3年間集中投資の政策によって実現、今後もインフラ老朽化に対応した需要を継続的に確保できる見通しがある。しかし建設業界すべてがこの需要を取り込み収益改善につなげているわけではないことも浮き彫りになりつつある。

     

     さらに、本業苦戦に対する忸怩(じくじ)たる思いも増している。ピーク時の4分の1程度から回復の兆しが見えない新設鋼橋需要について橋梁メーカートップは、「橋梁メーカーとして本業の需要低迷は寂しい。過去のようなビッグプロジェクト実現へ向かう高揚感もないのは非常に残念」と話す。

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    掲載日: 2019年5月31日 | presented by 建設通信新聞

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