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  • スコープ/厚労省、高校生ら向け入職促進策を初実施/建設業の理解深め選択肢の一つに

     若者に建設業を知ってもらう第一歩に-。厚生労働省は2018年度、高校と高等専門学校の生徒を対象にした建設業への入職促進策を初めて実施した。全国で建設会社・団体による出前授業や現場見学会などを開き、生徒や教員が率直に知りたい建設業の現状や魅力を伝えてきた。出前授業などに参加した生徒の中には、参加前に考えていなかった建設業への就職を進路の選択肢に加えた人もいたという。

     

     厚労省が18年度予算で「建設業若年者理解・定着促進事業(つなぐ化事業)」を創設した。運営業務を委託した労働調査会(東京都豊島区、藤澤直明社長)が学校と建設会社・団体を仲介。▽生徒や教員と建設会社・団体の関係者による意見交換会▽建設業関係者らによる学校での出前授業▽地域にある建設現場の見学会▽建設会社へのインターンシップ(就業体験)-などの取り組みを行ってきた。「つなぐ化」という事業名には若者と建設業をつなげるという思いが込められている。学校側は原則費用を負担せず、イベントに参加できる。

     

     入職促進策の対象を高校や高専の生徒に絞った理由は、学校を卒業して建設業界に就職した生徒の3年以内離職率が他産業に比べ高いためだ。厚労省が文部科学省の「学校基本調査」を基にまとめた15年3月の新規高卒就職者の3年以内離職率は建設業で46・7%。全産業平均(39・3%)を7・4ポイント、製造業(28・0%)を18・7ポイント上回る。

     

     早期離職の背景には就職先を決める過程で知りたい情報が十分に得られていない状況もある。国土交通省国土交通政策研究所(国政研)は16年12月~17年1月、全国にある工業高校の建築系学科の進路指導担当教諭や土木建築系学科の3年生を対象に「国土交通分野の将来見通しと人材戦略に関する調査研究」を行った。それによると、在学中に建設業の仕事内容や給与、休日などの待遇について知る機会があった生徒の方が、そうでない生徒と比べ建設業に対する前向きな印象を持っている傾向が強かったという。

     

     つなぐ化事業は18年度に16都道府県(北海道、山形、福島、栃木、埼玉、千葉、東京、山梨、岐阜、大阪、和歌山、福岡、長崎、熊本、宮崎、沖縄)で計66回開いた。実施回数の学校別内訳は工業高校51回(校数29校)、高校普通科10回(9校)、女子高1回(1校)、農林高校2回(2校)、高専2回(1校)。内容別では現場見学会48回、出前授業15回、意見交換会2回、インターンシップ1回となっている。

     

     参加した生徒に感想を聞いたところ、全体の94%が「非常に役に立った」(回答率62%)あるいは「役に立った」(32%)と回答した。参加前に知りたかった内容は「建設業の将来展望」(42%)や「現状・課題」(37%)が多く、知りたかったことに対する満足度は97%が「十分に知ることができた」(42%)あるいは「だいたい知ることができた」(55%)と答え、おおむね好評だった。

     

     建設業への就職に対する意識の変化も見られた。21%が「参加前は考えていなかったが、建設業への就職を選択肢の一つとして検討したい」と回答。建設業に対する印象も95%が「かなり良くなった」(35%)もしくは「良くなった」(60%)だったという。

     

     厚労省は16年3月に決定した第9次建設雇用改善計画(16~20年度)で、最重点施策に「建設業への若者の就職・定着促進」を挙げた。初めて行ったつなぐ化事業に一定の効果があったと見ており、今後は実施回数の増加や内容の充実・改善を図る。

     

     厚労省は19年度、つなぐ化事業を18年度の2倍に相当する計約130回開催し、全都道府県で2回ずつ実施する目標を掲げる。開催を希望する学校と建設会社・団体の応募は労働調査会のホームページ(https://tsunaguka.chosakai.ne.jp/)で随時受け付け中。併せて20年度以降の事業継続も目指している。

     

    □熊谷組が立教女学院で施工体験授業も□

     

     厚労省が18年度に創設したつなぐ化事業。建設会社・団体の関係者による高校や高等専門学校への出前授業など、18年度に行われた多くが工業高校の男子生徒向けだった。そんな中、女子高で唯一開催されたのが東京都杉並区にある立教女学院高校だ。

     

     同校で理科を担当する清水亨祐教諭が企画。以前から面識があった熊谷組管理本部人事総務部ダイバーシティ推進グループ担当の黒嶋敦子部長に相談したところ、厚労省のつなぐ化事業を活用し、同社による校内での施工体験授業が3月26~27日に行われた。

     

     授業には1~2年生(現2~3年生)約20人が参加し、熊谷組協力会社組織の「熊栄協力会青年企画部会」の指導を受けながら通路の舗装作業を体験。ミキサー車から生コンクリートを運び、敷きならしたり締め固めたりする一連の工程を慣れない手つきながらも丁寧にこなした。黒嶋部長との質疑応答も設けられ、生徒からは「建設現場の中で何をしているのか気になる」「現場はきれいなのか」「女性が重たい物を持たされることはあるのか」といった質問が相次いだ。

     

     体験授業を振り返り、清水教諭は「実体験からコンクリートの性質を深く学ぶことができ、さらに進路を考える良い機会にもなった」と話した。その上で「舗装体験を見ても分かるが、女性ならではのきめ細かさは建設業で貴重な力になるのではないか」と語った。

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    掲載日: 2019年6月19日 | presented by 日刊建設工業新聞

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