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  • 建設論評・女性活躍への「壁」

     国土交通省が建設業での女性活躍の取り組みをさらに浸透させるために、新たな行動計画の作成に着手するという。2014年度にスタートした行動計画を見直して新計画としてまとめるようだ。

     

     歓迎すべき取り組みだが、前提にすべきは建設業に働く女性たちの意識や職場の実情だ。参考になる資料がある。日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)が「時短アンケート」として発表している。調査の主題は労働時間関連だが、その中で女性が働き続けられる環境についても聞いている。ゼネコンで働く女性約1900人が対象だ。

     

     約62%の女性が「結婚、出産、育児などにかかわらず働き続ける」ことを理想とするが、現実は54%に減少する。特に外勤者(現場勤務者)では60%近くが「働き続ける」ことを理想とするが、その現実は33%と大きく減少する。妊娠、出産、育児などを具体的に考えると、自らの思いとは別に働き続けることは難しいと考えるようだ。

     

     男性組合員との意識ギャップも大きい。「働き続ける」ことを望む女性に比べて、それを理想と考える男性は40%弱、現実はとなると22%程度に過ぎない。男性の意見は「出産を機に一度退職し、子育てに手がかからなくなったら再び働く」というのが最大多数だ。だが一度退職したら女性のキャリアは途切れ、再就職しても以前のような仕事に就くのは難しくなる。

     

     女性に共働きをしながら育児をしていくための環境整備についても聞いている。短時間勤務や子どもの病気時の看護休暇、育児期間中の職場の理解などを求める声が多い。

     

     14年の国交省の計画では、建設業に働く女性技術者を当時の約1万人から2万人に倍増することを目標とした。達成されたようだが、その流れを維持できようか。

     

     アンケートを見る限り、建設業に働く女性の前には見えない「壁」が存在していそうだ。特に現場の女性技術者が出産や育児などのライフイベントに直面した時にこの「壁」を乗り越えるには、大きなエネルギーがいるだろう。調査対象がゼネコンなので育児期間中の短時間勤務なども制度的にはかなり整っていよう。だがその利用にも果たして「壁」はないだろうか。

     

     専門工事業で働く女性技能者については、おそらくゼネコン社員よりその「壁」は大きいだろう。もちろん従業員としての雇用が進んで社会保険加入が浸透すれば、出産や育児休業についての一時金や給付金なども利用できよう。制度的には女性活躍の可能性が高まる。

     

     いま必要なのは、ごく普通の女性たちが希望を持って働ける環境づくりだ。まずは見えない「壁」をなくすことに業界挙げて取り組むべきだろう。現実的に考えると、現場で働く女性が妊娠した時には担当業務などでの配慮も必要だろう。それらも含めて、なによりも経営者の強いリーダーシップが望まれる。

     

    (新)

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    掲載日: 2019年7月3日 | presented by 建設通信新聞

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