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  • 五輪まで1年/都、国交省/工事調整の試行開始/民間含む連携が課題

     2020年夏季東京五輪まで残り1年となる中、東京都と国土交通省という主要公共発注機関が、建設現場発の交通混雑緩和策の試行に乗り出す。東京都は7、8月にかけ、都発注工事の現場において休工日の振り替えや工事車両の夜間入場などを実施する。国交省関東地方整備局も10日、直轄工事における工事調整などの独自施策を発表した。ただ、現時点では各発注者それぞれの動きであり、自治体を含め、五輪関係エリア全体をとらえた統一的・横断的な連携体制の構築には至っていない。さらに、圧倒的な現場数の民間工事をどう巻き込むのかという最重要課題も残る。建設業界としては、工事の一時休止などに伴う費用負担も気になるところだ。官民、受発注者が縦横に一丸となった体制づくりが急がれる。都の取り組みは、大会開催を契機に新しい働き方や企業活動のモデル確立を目指す「スムーズビズ」の一環。

     

     大会期間に相当する集中取組期間(土日を除く22日-8月2日、同19-30日)に、発注済みの現場のうち、約1360カ所で実施するという。午前7時から午後7時までの工事車両の入場調整や、高速道路の利用を避けた輸送ルート構築などで協力を求める。

     

     関東整備局は実施件数を対外的に明示した上で、試行条件に合致する90件の工事すべてで、一時休止や夜間施工への切り替え、車両通行ルートの変更といった工事調整を行う。

     

     ともに本番を見据えた取り組みではあるが、今回はあくまでも「現場サイドへのお願いベース」で、受注者には工期などに影響が出ない範囲での協力を呼び掛けている。来夏に向けては、より実践的な対応が長期間にわたり求められ、発注者として工期や費用の変更にも正面から向き合わなければならない。今後は発注時期や工期設定の工夫、設計変更のあり方など、もう一歩踏み込んだ検討が不可欠となる。

     

     東京五輪期間中の取り組みは、都内現場に従事する元請けと専門工事業だけでなく、資機材・製品納入などの物流を含め、幅広い業種に影響を与える。そのため、今夏の試行に対し、建設産業界は強い関心を示している。

     

     一方、動向が不透明で対応の見通しも立っていないことに元請けと下請けが一番やきもきしているのが、民間工事の扱いだ。

     

     複数の建設業界関係者はこう言い切る。「五輪だけでも17日間。4日間の交通規制だったG20大阪サミットの対応は参考にならない」「そもそも多数の民間発注者の理解を得て、現実的な対応を協議するための調整役は誰がするのか」「元請各社に任されても先頭を切ってできるわけがない」

     

     あるデベロッパー役員は「これまでにゼネコンから五輪への対応や働き方改革を含め、現場閉所に伴うコストアップや工期などについての相談は一切ない」と話す。

     

     民間工事まで強制的な規制を強いることが難しい行政、日給月給の職人からの突き上げで早期に都内現場の対応を判断したい下請け、下請けから突き上げられながらも個社だけで現場対応の決断をすることが難しい元請け。現段階では三者三様、三すくみの状況に陥っている。

     

     まずは関係する行政機関が密に連携し、一定のルールなどを整えた上で、次のステップとして民間の発注者団体や建設業団体を通じ、各企業に協力を仰ぐという流れが順当だろう。官側のかじ取り役を決めるのが何よりも先決だ。

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    掲載日: 2019年7月11日 | presented by 建設通信新聞

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