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  • 建設論評・おおらかな時代の終焉

     昭和、平成、令和と3つの時代を経験している会社員は主に50代だが、「昔はおおらかだった」と感じる場面も多いはずだ。昭和の時代には笑い話で済まされた軽微な不祥事が、いまや大事になり得る。社内では、悪意のないふとした言動が「ハラスメント」扱いされかねない。何かあれば、謝罪会見と第三者委員会の設置が定番となった。

     

     前時代の個人的な話だが、結婚式の司会を落語家にお願いした。名門の亭号(流派)を持つ二つ目の若手落語家だった。当時、その落語家のブログに掲載されていた個人のメールアドレス宛に仕事を依頼し、「かなり安いですよ」と本人もグチるほど破格の謝礼を支払った。やはりプロだけに、結婚式はとても盛り上がり大成功だった。その後、まれにテレビにも出演するようになり、さすがに安すぎたと当時は反省した。

     

     しかし、これはいわゆる「闇営業」だったのかもしれない、と最近になって思い始めた。師匠や事務所などにきちんと話を通していたのかどうか、確認は取っていなかった。この点については、闇営業問題が話題となった最近、ようやく反省し始めた。

     

     建設業界、例えば職人の世界では、闇営業が横行していた時代があった。会社や事務所を通さず、仕事を手伝って報酬を得る。職人の処遇の低さが根底にあったが、その点ではお笑い芸人と似た構図かもしれない。職人の場合、労働災害が発生した場合に事態はより深刻化する。いま職人の処遇は向上を続けている。もはや、こうしたことは存在しないと信じたい。

     

     集合住宅などの施工不良問題が、想像以上に建設業界にインパクトを与えているようだ。あるゼネコンでは内部通報制度を大幅に拡充した。過去の施工現場を含め、施工不良を認識していた場合、会社に報告するよう求めている。これはごく当然の要請だろう。しかし、その先が新時代だ。本人自らが不正に携わっていた場合でも、本人からの申告があれば処分を皆無にするか大幅に軽減するという。

     

     「社内リーニエンシー」と皮肉の声もあるように、社内では賛否両論があったようだ。「いやな時代になった」とも感じるが、おおらかな時代が終わったいまを象徴する動きでもある。

     

     高いプライドやこだわりを持つ職人や技術者は多い。もちろん、誰もが進んで不正を行いたいわけではない。不正に至った背景があるはずだ。その善しあし、好き嫌いは個人の判断で分かれるだろうが、「罪を憎んで人を憎まず」という思いを忠実に制度化すると、こういう形になるのだろうか。

     

     逆説的に考えると、これはある種、おおらかな制度かもしれない。懺悔(ざんげ)とともに、過去に犯した過ちの責任を会社が背負ってくれる。寛容さが希薄になったこの時代に注目すべき制度かもしれない。もちろん、モラルハザードの発生にはかなり注意を払わねばならないが。

     

     幸か不幸かまだ離婚はしていないが、もし機会があれば、次の結婚式の司会も落語家にお願いするつもりだ。もちろん、きちんと事務所を通して。(泪)

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    掲載日: 2019年7月24日 | presented by 建設通信新聞

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