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スコープ/日建連/フロントローディングの業界標準作成
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>◇品質・工期・コストを関係者で早期合意
日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)は、建築生産システムで作業工程を前倒しする「フロントローディング」のさらなる普及に乗りだす。施工者が設計プロセスに関与しやすい設計・施工一括(DB)方式をベースに、フロントローディングの業界標準をまとめた。生産性革命や働き方改革を前進させるツールとして提供し、会員企業の積極的な取り組みを促す。
改正労働基準法に基づき、建設業には時間外労働の罰則付き上限規制が2024年度から適用される。国は、17年6月に建設業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議を設置。同会議が策定し、18年7月に改定した「適正な工期設定等のためのガイドライン」では、時間外労働の上限規制の適用に向けた生産性向上の具体施策の一つとして、「フロントローディングの積極活用」を明記した。
日建連はこうした状況を踏まえ、フロントローディングの調査・研究に着手。個々の企業で考え方や取り組みがさまざまだったフロントローディングを「プロジェクトの早い段階で建築主のニーズを取り込み、設計段階から建築主と設計者、施工者が合意形成を進め後工程の手待ちや手戻り、手直しを減らすことにより全体の業務量を削減し、適正な品質・コスト・工期を作り込むこと」と定義付けた。
業界全体に取り組みを広げるため、フロントローディングの基本的な考え方や実例を紹介する「フロントローディングの手引き2019」をまとめ、7月に発表した。フロントローディングに川上から取り組んでいるゼネコンの事例を基に、概略フロー図を作成。「人材・組織」「計画」「図面」「コスト」の四つの視点から解説している。
設計段階で構工法や施工技術など生産情報を施工者と協議し、設計図書に反映するのがフロントローディングの要となる。人材・組織面では、基本設計段階で作業所長など施工系人材を早期に配置することが必要だと指摘した。作業所長は施工段階のコストや工期に対する決定権を持つ。早い段階から設計図書に施工方針を反映することで、手戻りのない設計と施工につながる。
鉄骨や外装など工場製作を伴う工種や設備などの設計仕様に大きく関係する専門工事業者を早期決定する重要性も強調。製作図や設備図に早く着手でき、施工図の作り込みでリードタイムを確保できるとした。
建築主と設計者、施工者が早期に情報共有し、合意形成によるスムーズな設計や生産プロセスを実現するため、企画から基本計画、基本設計、実施設計、請負契約、施工まで各段階の建築主、設計、施工者それぞれの役割とメリットも記載している。
設計者や施工者だけでなく、建築主のメリットにも言及した。段階的な意思決定を行うための情報(コストや所要工期など)が従来より早く正確に建築主に届くようになり、投資対効果を最大化する。同時にリスクを最小化できると有効性を訴えている。
フロントローディングに有効なハード技術の事例は「建築省人化事例集」から27事例、フロントローディングの実施プロジェクト事例は「生産性向上事例2017年度版・2018年度版」(いずれも日建連作成)から9事例を抜粋した。
手引は建築生産委員会の施工部会と設備部会、建築設計委員会の設計企画部会が作成した。木谷宗一施工部会長は「建築主、設計者、施工者の理想的な三方良しの関係を構築することだ」とフロントローディングの目的を説明。より多くの事例を収集・公開していくことで、「具体的な進め方やノウハウに関する関係者の理解を促進していきたい」と意欲を見せる。
日建連会員企業全体の建築受注額の約半分はDB方式が占めている。設計・施工分離方式など他社設計を含む多様な発注方式へのフロントローディングの展開が課題となる。
フロントローディングの取り組み状況を把握するため、17年に実施した会員企業へのヒアリングによると、「DB方式でうまくできていることを、設計・施工分離方式でどのようにうまく展開するかがポイントだ」との回答があった。
施工予定者が設計を支援するECI方式の有効性を指摘する意見もあり、「フロントローディングの設計・施工分離方式への展開が可能となる」とした。ただ「責任の境界線を明確にすることが重要だ」と注文を付けた。
国土交通省など関係省庁や団体、建築主などから手引への意見を募り、設計・施工分離方式でもフロントローディングの効果が発揮できるよう適宜改定していく。設備に関するフロントローディングの取り組みも充実させる方針だ。
残り50%掲載日: 2019年8月1日 | presented by 日刊建設工業新聞