建設技術者向けNEWS
建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!
-
スコープ/5G活用しビジネスモデル変革/通信キャリア各社が多産業と連携強化
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>◇社会課題解決や地域活性化など後押し
総務省から認可を受けた通信キャリア4社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル)は、2020年春ごろから第5世代通信規格(5G)の商用サービスを始める。「超高速」「多数同時接続」「超低遅延(リアルタイム)」といった特徴を持つ5Gが社会・経済に与えるインパクトは大きく、これまでの通信規格とは異なる形で広がる見通しだ。建設産業でも通信キャリアと5Gを活用したビジネスモデルを模索する動きが活発化している。
5Gは、現在の携帯電話の通信規格であるLTE(ロング・ターム・エヴォリューション)と比べると、100倍の最高伝送速度(10ギガbps)と接続機器数(1平方キロメートル当たり100万台)、10分の1の超低遅延(1ミリ秒程度)を実現する。IoT(モノのインターネット)の基盤技術として注目を集める。これまでは移動通信・携帯電話サービスがビジネス展開の領域だったが、5Gでは4K・8Kなど高精細映像の超高速伝送のほか、車の自動運転やロボットの遠隔操作、インフラの効率管理など、ビジネス領域が一気に広がることが予想されている。
7月17~19日に東京都内で開かれた「5G/IoT通信展」には多分野の関係者が参加。通信産業を管轄する総務省や通信キャリア各社幹部の講演には聴講者が殺到し、今後の5G関連の戦略に耳を傾けた。
「政策側として注意したのは地域の活性化と5Gをどう結びつけるか。(従来の通信規格のように)都市部からサービスを始めて周辺都市に広げるといったこれまでの人口カバー率の考え方は捨てた」
総務省の谷脇康彦総合通信基盤局長は、5Gでは人が住んでいない地域でも工場や農業などでニーズが広がることを見据え、広くサービスを届けることを重視。2年以内にはすべての都道府県でサービスが開始されるよう、5Gの基地局などネットワーク整備を積極的に支援していく考えを示した。
ITの普及が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の推進に向け、NTTドコモの中村武宏執行役員5Gイノベーション推進室長は5Gをメインのコア技術と位置付ける。IoTや人工知能(AI)、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)、クラウドなど、デジタル社会を支える技術や仕組みを高度に結びつけるネットワークの要となり、さまざまな社会課題の解決に期待を寄せる。
5Gを活用したより付加価値の高いサービス提供に当たり、「協創イノベーション」を掲げる同社は「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」を展開。ゼネコンなど建設関連企業を含め、2800者超(6月末時点)の企業・団体、組織が参画し、5Gの実験・実証設備を活用しながら、新たなビジネスモデルの具体化に取り組んでいる。「5Gをはじめ、IT関連の情報共有・交換の障壁を取り除き、コミュニケーションやマッチングの場にもなっている」(中村氏)。
「あくまで5Gはテクノロジーであり、サービスそのものではない。イノベーションにより、どのようなサービスを展開していくかが求められている」
KDDIの赤木篤志執行役員常務技術統括本部技術企画本部長は5Gを「あらゆるものがつながるコミュニケーションの世界を創りあげ、DXを支える技術」と位置付ける。これまで分断されていたリアルとバーチャルの世界が融合し、人々の生活をより良い方向に変革させることに期待感を示す。
新たなサービス創出に向けた取り組み強化の一環で、同社は5G/IoT時代のビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE(東京・虎ノ門)」に続き、今秋にも大阪と沖縄に新拠点を開設する。赤木氏は「5Gの進化とともに、いろんなアライアンスを組みながらサービスを含めて(デジタル社会の)明日を築いていきたい」と意気込む。
ソフトバンクの野田真モバイルネットワーク本部長は「労働人口の減少や自然災害の多発など、さまざまな課題に直面する中で、5GやIoT、AIを掛け合わせたテクノロジー活用が課題を解決する」と訴える。今後あらゆる産業で自動化の流れが一段と加速することを見据え、データの量と質を重視し、5Gを活用して通信事業から事業創造企業への変革を目指す。
顧客ニーズに柔軟に対応するため、持ち運び可能な5G設備「おでかけ5G」を開発。多分野の企業と連携しながら、新たなビジネスモデルの実証・実用化に率先して取り組む。成層圏に飛行させた航空機などの無人機体を通信基地局のように運用し、広域のエリアに通信サービスを提供する次世代システム「HAPS」の事業化も進める。野田氏は「あらゆるものがつながり、新たな価値が生まれる世界を自らの手で引き寄せる」と強気の姿勢を示す。
先行する通信キャリア3社に続き、10月から自社回線でのサービスを開始する楽天モバイルのアミン・タレック最高技術責任者(CTO)は、5G関連市場での差別化に自信を見せる。既存事業者と異なるクラウドベースの5G対応ネットワークの優位性を強調し、「日本や世界のために通信業界を変革できると思っている」と力を込める。
ラグビーワールドカップが始まる今秋にも、通信キャリア各社は5Gのプレサービスを提供。来春以降に商用サービスがスタートし、来夏の東京五輪・パラリンピックを経て、5G活用の各種サービスやビジネスモデルがさらに進化を遂げることになりそうだ。
残り50%掲載日: 2019年8月6日 | presented by 日刊建設工業新聞